酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年07月05日(土) 『ラヂオ・エチオピア』 蓮見圭一

 男は妻子持ちの小説家。友人の紹介で出会った女性はるかは東大卒のジャーナリスト。よく喋りアクティブなはるかのペースに巻き込まれていく男。中でもはるかから届くメールの言葉に幻惑され、どんどんとはるかにからめとられていく男。妻の知るところになり、男はどうおさめようとするのか・・・。

 タイトルで惹き付け、内容の狂おしいせつなさでノックアウトされた前作の『水曜の朝、午前三時』の蓮見圭一さんの作品です。あの物語の印象が強すぎるので今回なにを持ってこられても前作を超えることはなかっただろうと思います。しかも今回は大人の不倫。前作を超えないまでにも意外な路線設定には驚かされました。
 不倫でも恋愛は恋愛。男と女が惹かれあい、一気に燃えあがる過程はよくわかります。せつなさはないけれど、愛したい一途な思いの表現はやはりうまいなーと一気に読みきっちゃいました。
 この男の揺れ動きは女性としては物申したい部分もありますけど、ま、あくまでも物語として流すことにいたします。

 ねえ、すべてがうまくいくということは有り得ないのかしら。考えてみて。私も真剣に考えるから。その上で、この先もなお嘘をついて生きていくしかないのなら、せめて私は誠実な嘘つきでありたい。 

『ラヂオ・エチオピア』 2003.6.30. 蓮見圭一 文藝春秋



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