酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2003年07月06日(日) 『愛と資本主義』 中村うさぎ

 ホストクラブの男にはまった女とそのホスト。第一話「海にいるのは」はホスト・リョウくんにはまった女・ミカの物語。このミカという女は多重人格だった。第二話「胸に鉛の月を抱き」は、ホスト・リョウくんの物語。リョウくんはナツミと言う客に‘飛ばれて’しまう(売掛を払わず消える。そうするとホストの自腹払いになる)。リョウは自分指名客のミカやマリエに相談するのだが。第三話「月はルナ、星はステラ」は、探偵事務所をひらいているマリエの物語。今はホスト・リョウくんにはまっているが、その昔はルナというホストにぞっこんだった。マリエのもとにルナの母親だという女がルナを探して欲しいと依頼にくる。忽然と姿を消したルナにいったいなにがあったのか・・・。

 ホストクラブは「愛」も「金」もシビアで残酷、とてもわかりやすい構造。客となる女たちは自分の居場所を探して彷徨っているのかもしれない。自分の欠落を埋めたいがために自らホストにはまってしまうのかもしれない「欲しい。でも、なにが欲しいの、私は?」 、作者の中村うさぎさんは自分を探しながら居場所をさがしながらあがき続けているのかしら。
 いきなりヒロインがホストにはまった多重人格者という設定で、そういう路線好きの私は‘はまって’しまいました。そしてみっつの物語がリンクし呼応しあっています。なかなか面白かったなぁ。なにかを求め続けている感じが痛いほど伝わってきます。私的にはかなりお気に入りv

 だけど、ホストの嘘が欲しくて、群がる女たちもいる。それは確かだ。誰だって、辛い真実ばかり見ていたくない。やさしい嘘でくるんで欲しい時もある。

『愛と資本主義』 2002.11.20. 中村うさぎ 新潮社



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