酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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| 2003年06月23日(月) |
『完全無欠の名探偵』 西澤保彦 |
白鹿毛源衛門(しらかげげんえもん)は、溺愛する孫娘りんが大学卒業後そのまま高知で就職し、自分のもとへ戻ってこないことに駄々をこねる。部下の黒鶴の進言に寄り、りんには高知にとどまりたい動機があるらしい。その動機を知りさえすれば、りんを連れ戻す手はずもあろう。そこで黒鶴はひとりの大きな男、山吹みはるを御前に連れ出す。この山吹みはると言う男、そばにいるだけで個人の過去に埋もれた謎を掘り起こす。そしてその個人が勝手に考え気づき謎を解明してしまう。山吹みはるはなぁーんにも知らずその人のそばでのほほんとしているだけ(笑)。 白鹿毛りんのもとへ派遣された山吹みはる。みはるはりんの抱える高知にとどまりたい謎に迫ることができるのか?
西澤保彦さんの作品ではマイ暗黒ナンバー3という不動の三作品があります。『依存』・『黄金色の祈り』・『夢幻巡礼』です。ファンの間でも心に痛いと評判のものばかり。その三作品は別格として、西澤保彦さんの作品は何度読み返しても唸らされてしまう。しかも時間が経っていても色あせない。やはり西澤保彦さんは最高に面白いv この『完全無欠の名探偵』は、不思議な能力を持っているがために<完全無欠>です。心に眠っていた謎が、山吹みはるによって触発され、甦り、新しい視点で考え解明する。みはるが、ではなくて謎を抱える本人が(大笑)。なんともとぼけた大男みはるの存在がやさしくてユーモラスでいいなぁ。とってもv 物語の中で人間のさまざまな欲望や屈折した心模様がたくさん描かれます。これが西澤保彦さんの最たる魅力。ひどい人間いやな人間を書かせたらうまいと定評のある西澤保彦さんならでは。 そしてなにより西澤先生ご自身が、まことにほのぼのとお優しい人となりであるだけに、そのギャップがまたたまらないんですね。オススメです。
だけど他人が見たら馬鹿らしいことだって、そのひとにとってはかけがえのない拠り所かもしれないじゃないですか。
『完全無欠の名探偵』 1995.6.5. 西澤保彦 講談社ノベルス
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