「ではナルーザスさん、息子さんのことはご心配なく」
ドーラは棟梁と固く握手を交わし肩を叩き合った。
「こんな柔な息子で良ければ連れて行ってやってくれ」
強がっているが内心淋しそうな棟梁。
「今生の別れでもあるまいに。あははは」
棟梁の奥さんが雰囲気を和ませる。 昨晩ドーラは村人達が餞別にくれた保存食 (海獣の乾し肉と油)を丁寧に貨車へ積みこんだ。 期待と不安で良く眠れなかった。 そして今日、出立である。
村人のほとんどが見送りに出てくれている。 なんだか勇気が湧いてきた。 助手席のサウムは窓から乗り出して手を振った。 モーター始動。 スーンという軽やかな音。 動き出す電車もどき。 レールの繋ぎ目に来るたびに車輪がカタンカタンと鳴る。 心地よいリズム。 時速60�舛泙脳紊欧襦� ヘッドライトの届かない向こう側にはヒカリナメクジの光点が煌く。 ヒーターを強くした。
「いまの見ましたか? 犬でしょうか」
サウムがふいに言う。
「犬がこんな地下に居るのか?」
「だってほら、あそこにもまた」
線路の脇にうずくまっている白いふさふさしたものはやはり犬だった。 試しにクラクションを鳴らしてみた。 ふさふさはビクンと起き上がってキョロキョロしている。 その顔には目が無かった。 ドーラは犬を轢かないように気をつけなければと思った。
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