ソレイユストーリー
▽▲▽▲▽ ソレイユストーリー ▽▲▽▲▽

2004年01月11日(日) 25話 『ドーラの冒険が始まる』

アルバトロスの船倉には分解されたトラック。
左右のカタパルトにはコンテナを改造した貨車が1両ずつ。
ようやく北の海上駅に着いたのは夕暮れ時だった。

ドーラは村人に出迎えられるとまず村長(むらおさ)の元へ急いだ。

「今回戻って来たのにはある計画があってのことです。
 それは地下鉄の復興に先駆けて、
 自分自身で全軌道を確認するために旅立つことなのです」

「ほぉ、それは難儀なことよのう」

なんだかのんびりした答えが返って来た。

「ぜひ協力を…あなた方の協力が必要なのです」

ドーラは前のめりになって訴える。

「協力と言われてもあれだよ。ここは見てのとおり寂れた寒村じゃ。
 男手は足りんし若者も少ない。何が出来るかね?」

しぶい。

「大したことではありません。
 私の用意してきた列車を地下へ降ろして組みたてて欲しいのです」

微妙な間が空く。

「良かろう。それに乗ってあんたは旅に出るというんだね」

「はい」

簡潔に話はついた。


---翌日

がらんどうのエレベーター通路から、
重い部品をひとつひとつ降ろして行く。
なかでも水素タンクは慎重を要した。
コンテナは大きすぎて通らないので、
2つに切り分けてから降ろし、下でまたくっつけた。
作業は船大工の棟梁ナルーザスさんが、
若い衆を先導して引き受けてくれた。
ナルーザスさんの跡取息子のサウムという若者が、
何故かドーラによく懐いて、あれこれと世話を焼いてくれた。
きっと職人気質のドーラの姿にある種の憧れを抱いたのだろう。

「ドーラさん、実は僕も連れて行って欲しいんです」

藪から棒になんだろぅ。

「地下鉄の旅へ…かい?」

ドーラは連結器の調整をしていた手を休めて訊いた。

「僕はもう20歳です。子供ではありません」

やけに真面目腐った顔で言う。

「そうだね、私もキミの歳には海へ出ていた」

しばし沈黙が流れる。

「棟梁は知っているのかい?つまり…」

ドーラは整備中の列車(のようなもの)を見上げてから、
プラットフォームの向うへと続く暗闇を指し示した。

(この先には何が待ちうけているか解からない。危険な旅なのだ)

「僕は一生こんな小さな村で終わりたくない。
外の世界を見たいんだ。それがどんなものであれ」

うつむきながらも真剣に語るサウム。
自分にもこんな情熱的な時代があったっけと少し照れたドーラだった。






                      


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