ソレイユストーリー
▽▲▽▲▽ ソレイユストーリー ▽▲▽▲▽

2003年07月04日(金) 6話 『黄金』

「ねぇ、聴いても良い?あなたの産まれ…」

とリアラ。

「他の星さ」

ポツリとロフティー。

「ねえ、どうして陸で暮らすようになったのか…聴かせて?」

「…まぁ…いろいろな」

「フㇷ、相変わらずねえ」



無口な彼だった。
彼の心には、複雑な過去が眠る。


親の代に、この僻地へと移住した。
彼らは不毛地帯でも順応できる品種の栽培を試みた。やがて緑の農園が生まれた。

だが、ある夏オのニカマドウマ大発生により、農園は全滅。
一家はやむなく方舟に住み込みで雇われた。
苛酷な労働の毎日だった。
やがて両親は病死。
若いロフティーは真面目によく働いたので、しだいに責任ある職を任されるようになった。
20代半ばになると、同僚からも親方からも一目置かれる存在になった。
彼には生まれついてのカリスマ性があったのだ。


やがて暖簾分けと言う形で小さな方舟を与えられた。
彼は商人も役人も海賊も分け隔てなく歓迎した。
そしてどこよりも繁盛し、分店を増やしていった。

親方から上手い話を持ちかけられた。なんの疑いもなく誘いに乗った。
騙され、濡れ衣を着せられた。
汗水垂らして増やした持ち船全てを取り揚げられ、ギルドからも追放されてしまった。

それ以来、彼は他人を信用しなくなった。
組織を嫌って陸へと戻ったのもそのため。
周りから変人扱いを受けながらも、自由気ままにやって来た。

ささやかな2人の生活にも、転機が訪れる。
穏やかな入り江で、ロフティーが1枚貝の養殖槽の縁を修復していた。
岩コロの中に、奇妙な物が混じっている。
それは……、異国の壷のように見えた。
彼は持ち帰り、慎重に研磨洗浄。
黄金の壷であった。
リアラもこれには驚いた。
2人は翌日から、入り江一帯の岩礁を丹念に調べ歩いた。まるで宝探しの様相を呈する。
ロフティーは、大量のアンティークを少しずつ復元し、古美術商船へ出向た。
このあたりは難破船が多い。
かつて貨物船が難破し、積荷がここへと漂着したのだろうか……?。
人間だって流れてくる。


歳月は流れた。

2人はかなりの財産を築いていた。
ロフティーは中型の外洋船を購入した。
行商の範囲がグッと広まった。

リアラは、方舟や遊郭船で重労働させられている孤児達を買い受けては、自ら建てた孤児院に住まわせた。
子供達は彼女から農業に関する技術、そして遊びというものを教わった。
みな活き活きと陸の生活を謳歌した。
自由がどんなに素晴らしいか……、産まれて始めて知ったのだった。

2人の関係は次第に離れていった。

ある晩、1枚の置手紙を残し、ロフティーは海へと旅立つ。
理由など彼自身にも解らない。
手紙には1輪の押し花と「ありがとう…」とだけあった。

残された9人……。
昆虫撃退にも慣れ、陸での暮らしが身に付いていた。
誰ひとり、どこかの人口環礁へ移り住む……などとは考えはかった。

リアラの願い。

(この土地で暮らそう。なにがあろうと、
今のささやかな幸せを守っていこう……)



   つづく


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