ソレイユストーリー
▽▲▽▲▽ ソレイユストーリー ▽▲▽▲▽

2003年07月03日(木) 5話 『別離…』

重い空の下には、キルマと巡視艇船の姿があった。

「自沈……」

胸元へボソと囁く。

救命ボートから振り返ると、
波間には、命令に逆らおうとする舳先が残る。
パートナーとして尽くしてくれた老体へ、彼は敬礼をした。

波消しブロックから這い上がったキルマは、救命ボートをその隙間へ隠した。
背囊を背負い、閉まりかけるゲートへ急ぐ。

足取りが重い。

彼の虚ろな瞳には、哀しげな眼差しで微笑む何かが見えた。

その頃、遠く離れた大陸では……。

紅い鳥に導かれるに、海岸へと走る大男がいた。薄暮の浜辺に一人の少女が打ち揚げられているのを見つける。


(……まだ息がある。)

大男に運ばれた彼女は、やがて体調を取り戻すと、見たことのない作物の世話を教わった。

そして……、時の流れとともに、二人は夫婦のようになっていった。

彼女の心には別の男の温もりが消えない。

しかし、海の上の生活しか知らない彼女にとって、ここでの生活は新鮮なものに感じられた。

ある夜、オニカマドウマの群が農作物を荒らしに来た。

城壁のように畑に張り巡らされた通電バリケード。厚い甲殻をまとった彼らに、弾丸は無力なのである。

境界線を越えて来る侵略者達を、手製の電撃ロッドで待ち構える屈強な大男と華奢な少女。

やがて東の空が赤く染まる。

安堵の息をもらすふたり。

高く晴れ渡る空の下に、小型船を操り方舟へ農作物を運ぼうとする大男がいた。

彼の澄み渡る瞳には、明るく輝く波間の乱反射が映っていた。


 つづく


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