ソレイユストーリー
▽▲▽▲▽ ソレイユストーリー ▽▲▽▲▽

2003年07月03日(木) 5話 『別離…』

鉛色の空。
ロイヤルブルーの荒れた海面。
人工環礁の二百メートル手前にドーラの船があった。
明灰色に暗赤色のモールドが特徴の制服を着替えて、
男はありていの服装になった。

「コードcr4z16 自沈せよ」

「オンセイコードショウゴウ。ジチンシマス」

この船は目立ちすぎるのだ。
短い間だったが仕事の相棒としてよくやってくれた。
しかしこれでサヨナラだ。
ゴム製の救命ボートに工具などを積むと、
薄暮の波間に沈みゆく相棒を後にした。

ゴツゴツした波消ブロックから這い上がると、
ゴムボートの空気を抜いて隙間に隠した。
重いリュックを背負い、ゲートから静かに街へ入る。
今日からここがオレの生きる場所になるのか?
まずはスラムに紛れて小さな修理屋でもするか…
人工環礁(島)のゲートに向かう足取りは重い。
ドーラはあの透ける紅髪の少女を思い出しては、
ひとり胸を痛めた。




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見慣れぬ紅い鳥に誘われる様にして浜まで降りてみた大男がいた。
浜には一人の少女が打ち上げられているではないか。
……まだ息がある。

大男ロフティーに命を救われたリアラ。
彼女はこの入り江で農業を教わり、ロフティーの身の回りの世話をした。
海の生活しか知らなかった彼女にとって、
ここでの生活はとても新鮮なものであった。







この時代、陸で生活をする人間はほとんど居ない。
いつの頃からか、陸上は肉食の昆虫に支配されてしまった。
古代戦争において、生物兵器として生まれたある昆虫が、野生化、巨大化した。
あげく緑を食い尽くし家畜を食いつくし、人類を衰退させていった。
人間は水上に追いやられた。



夜行性のオニカマドウマが農作物を荒らしに来る。
作物を守る為に、通電バリケードを張り巡らしてある。
それでも越えて来るヤツは電撃ロッドで追い払う。
鎧のような殻に覆われたオニカマドウマに銃は効かない。
陸の生活に安眠はないのである。





ロフティーは、ときたま小船で方舟まで行商に行く。
方舟のマーケットには何でも揃っていた。
リアラは一度もついて行かなかった。
どこで捕まるか分らないから・・・
ロフティーは事情を知って他の誰にも彼女の存在を明かさないでおいた。
いつしか二人は夫婦のようになっていた。
しかし、
彼女の心にはいつでもあの男---ドーラが棲んでいた。




 




                     つづく


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