その子
その子は、自分よりも大きな犬を連れている。 大きいけれど幼い犬は、元気よく歩く。 弾むように、跳ねる。 それに応じてその子も跳ねた。 リードをぎゅっと握って。
涙を溜めながら散歩しているその子は、 私を見つけると、腕で涙をぬぐう。 ゴシゴシと。赤い袖口がそこだけ深い色に染まる。
こんにちは。
その子は挨拶を返すと、足早に走り去る。 手をぎゅっと握って。 その背中がまた跳ねる。
しばらくしてから、またその子に会った。 歩くのは犬の右側。 犬と同じ速さで、ゆっくりと歩く。 私を見つけて、 ほんの少しだけ跳ねる。
2004年12月10日(金)
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