今までの最高記録に最高に疲れて痺れてしまい、ゴドッと音がするように芝生に倒れこんだ。
汗のカーテンが包み込み、その上に湿気のもやがデコレイトされている。瞳はチカチカと火花を飛ばして小五月蝿いので閉じる。タイムの声が遠くでなっているようだけれど、さらに遠くから、ポツポツという音が忍び寄ってきた。
ものの10秒で、ボタボタボタ、ダダダダと太鼓の連打に変わった。
デコレイトしてくれた湿気は一気に喰らい尽くされ、その内に汗のカーテンも溶かされていってしまうだろう、ほんの数秒の水分子の競演。全てが熱運動によって、全体のシステムも個々の分子も制御されている。
ただただ、人の五感では汗、湿気、大雨とクルクルと変わるように感じられるというのに
ただただ、人の五感では苦、自慢、不幸とクルクルと変わるように感じられるというのに
ヨーグルト状の吐瀉物は、あなたのそして私の五感で感じられるものを積み重ねて、ネルネルと混ぜ合わさって腐臭を放っているのです。
あなたの、そう君や其れや彼らの掃き出したネチャネチャとしたいやらしさが私の全身に浴びせられて、そうして左右非対称の鼻空から、日に1回しか歯を磨かない口腔から、耳孔から、毛の薄い全身の肌から入り込んだものなのです。
そう君や其れや彼らは、この大雨のように私の上に浴びせかける、無神経に無意識に。
タバコの数百種類のダイオキシンやタールやニコチンは、物質的にそう君や其れや彼らを蝕むのだけれど、透明の吐瀉物はあなたよりも私を穢していく。
何故なら、 ヨーグルトがすっかり黒いゴムになって塞いでしまっているのだから、そう君や其れや彼らの体感できるものは、殆どないのだ。
格好で満足して、商品経済で販売されているものから選んで、肉親や友人の話をして、異界に飛び込まないで、そんなもので人生が過ぎていく。
透明の吐瀉物の入り込んだ臍の下から心臓の真上までの真空を、大笑いで埋めた。そして呼吸を胸の上まで取り戻した。
この海辺の夕日を真空に仕舞い込んだような充足感が、先ほどの全身の痙攣の傷を修復していく。筋力切断という筋肉痛でさらに筋力が強化するように、もっともっと透明の吐瀉物の腐臭に耐えられるようになっているだろう。
暗くなった芝生を横目に意識しながら、後10分でもいれば、今度は肉体的な痙攣が襲ってくるだろう。
熱い風呂に入って、ああ、と嬉しいため息をついて終わってしまう、ただそれだけの痙攣も、嫌いではない。
けれども、吐瀉してロボットに戻るのは、さらに、悪くはない。