初夏の砂浜に穏やかに打ち寄せる波の模様を、大空に写したような雲が彼方へと打ち寄せていた。
真横に何列も並びながら、列ごとの感覚は不規則で渦を巻くような波面も引っ込んでいる箇所も波のしぶきが架かっているような場所もある。
何層もの波が彼方へと向かっていた。
その波の雲は、彼方の真っ赤から、朱色、オレンジ、うすオレンジ、枯れ草色から木目色、穂先の色まで変化して最後には色がなくなっていった。ただ、波の雲の複雑な形と相まって、何と言っても現せないほどの色が重なり、1箇所1箇所の味わいがラファエッロの絵画でも敵わぬほどであった。
大自然のプリズムと摂理を遠目に眺めながら、森林浴で大地の英気が胸の奥底まで清明さが入り込んできた。
温水プールに肉を横たえる時のような感動が全身を浸していく。
だからこそ、さらに奥深くにきみという残像があるのがはっきりと浮かび上がってくる。
肺に空気を満たしたままにしておけば、自然と水面に浮かび、吐き出せば2.3秒後には肉が沈んでいくという物質的必然のように
慌てていたり、心が生きたい儲けたいという欲や、尊敬されたいという名誉や執着でざわついている時には、肉は物質的必然には従わない。
ただ水中に沈んでいくだけで、あたかも生きながら死肉に変わってしまう。
この全身に入ってきて、心という思念を降り注ぐ滝で洗い流しながら、それでも浮かび上がってくる右頬の黒子
穏やかで大人びた微笑、自分の醜い執着を認める知性、くちくりと赤子のように愛らしい瞳、ほっそりとした二の腕、ペタ靴をaikoを大好きなのはすっかりと大自然が流す緑の滝が打ち砕いてしまったようだ。
どうしてその右頬の黒子なのだろう
どうしてきみなのだろう
どうして何重にも並んで遥をめざす波の雲は美しいのだろう
どうしてきみとの間には、越えられない泳ぎきれない大海が横たわっているのだろう
大空の海を渡っていけばきみまで届くというのに、天使の両翼がどうしてついていないのだろう
きみの体を抱きしめられるだろうか
きみのその黒子にキスが出来るだろうか
きみのその黒子に、せめて指先でキスだけでも
きみに、せめて触れられるだけでも