透けるように白い肌は意外にも深窓の育ちではなかった。
若々しくて恋愛のことだけしか考えない志向は、まるで最初に口に入れた時の、シャキ!っという弱い噛み応えのよう
けれど、きちっと教え込めばまだまだ深遠なことまで飲み込める瑞々しさが、白菜の水々しさのよう
時々、幼稚な所に呆れさせるけれど、やっぱり同年代の男の子と比べると大人な部分があって、まるでいつも太陽に当たっている緑葉の部分のよう
30代半ばの熟れ出したマンゴーの舌触りと比べると、決して豊かではないけれど爽快感が明朗さは歯ざわりがとってもいい
だから、生活を共にしていくことで味付けていこうと思っていた
結婚という刺激的な香辛料は最初は、興奮を呼び起こすだろうけれど、熟成させていくとあなたが柔らかくなっていっただろう。だってあなたは個性といえるものなど決して持てない人だったから。親という殻から飛び出して断崖絶壁に立つことも、そこから全てを投げ出して自分の判断に美しさを見出して、一寸先が闇に飛び出せない人だったから。わたしが幾ら一寸先の闇の先から呼びかけても、ジャンプなどとんでもなかったのだから。絶壁の断崖はあなたには、絶倒の断罪だったのだから殻から飛び出すことすら出来なかった。親の殻から夫の殻へと動くことしか出来ない、害虫カタツムリのようにぬらぬらとしていた。
だから、生活を共にしていくことで味付けしていこうと思っていた。
結婚という刺激的な香辛料に干しえびを加えるとさらに味わいが深くなる。人によっては好みではなくなるのだけれども、妊娠出産という干しえびはあなたをもっと美味しく熟成させただろう。
シャキシャキとした弱い歯ごたえはさらに柔らかくバナナの皮の歯ごたえになって、同年代の男の子と比較していた青臭さはすっかりつき物が落ちるようになるだろうし、爽快さや明朗さも何も見ていない微笑や従順な表面に変わるだろう。金銭や住居を与えていれば満足するという本能に支配されるだけの無個性だったのだから。
同じ白菜であっても歯ごたえも歯ざわりも舌触りもまったく別に変わってしまって、だからそうやってあなたを食して、そして毎日食して生きたかった。ごはんにキムチ、フランスパンにもキムチ、パスタにもラーメンにもキムチを入れて腸内環境も美しくなる。あなたを毎日食して活力あふれた日常生活を得たかった。
なにより、あなたが少しだけ緑葉のついたシャキシャキした白肌から、結婚や出産という香辛料や甘味料で赤いドロッとした粘液の殻に閉じ込められて変化していく様を見ていたかった。透き通るような白肌にはいつの間にか白粉が付き、さらに誤魔化せなくなりカサカサになり、鉛筆だこも無かった白魚のような長い指は洗い物や赤子の糞尿で木炭のように黒く剥(むく)れ、消火器のようにすっと通っていた腹部には、ぼてぼてとした脂肪とその脂肪線が2本も3本も付くようなって妊娠線まで加わる。なにより醜いのは、口先と腹の中が正反対であるのに疑問を持たない曲々(まがまが)しさで、弱者の立場から出ようとしないゴミ箱並の腐臭が鼻についてしょうがない。十何年か前の大昔はあなたの華にひきつけられたけれど、今はあなたといると鼻がまがってしょうがないし、洟が垂れている寝顔は可愛いなんて思えなくなる。
そうやってあなたの醜さや弱さ、くだらなさを全て受け止めたい、と想っていたんだ。キムチは素晴らしい発酵食品、あなたも個性などない白菜なんだから発酵食品にしてしまって美味しく食べたかったんだ。