ほろり、と涙の別れの後、図書館でいつもと違うソファーに座って読み出した
読み終わって時間を持て余したけれど、これ以上の深い海の音色は聞こえないだろうから、本屋にもカフェにも寄らず、
地下のスーパーで、健康と表示された卵を1パック買った
少し異なる階段を上がり、ゆっくりと春祭りの会場後へと足が向いた
乗り出してくる太い黒い幹に沢山の白い花弁が積乱雲のように、もこもこと
けれども、雲の端が所々散っていて、もうすっかりと夜の闇に沈みだしていた
お参りの後、振り返れば橙に色づけされた積乱雲の、この地上のものではないかのような、深海で音が完全に絶たれたような、息も呼吸も止まるような
忙(せわ)しなく歩く幾つものスーツに抜かれながら、それでも今日はすっかりと穏やかな気分だった
10年前、いや2年前で感じられなかっただろう、深い海の音色が体内から闇夜にあふれ出し、まるで橙の積乱雲を喰らっているかのような気分だった
注記:『ルームメイト』(4) 近藤ようこ著 小学館を読み終えて