| 2004年06月04日(金) |
寺山修二『ポケットに名言を』 |
世によくある、名言格言集を期待して、この本を手に取ったら、期待がはずれた。 そんな生易しいものではなかった。 ぱっと一目見て「そうそう!いいこというね!」みたいなお手軽な言葉はなく、古今東西の文学、演劇、映画の中の一言が抜き出されているのだが、その一言だけでは、何を意味しているのか、真意はかりかねる、というものが多い。 それでも、読みすすめるうちに、この本は、名言格言を知識として得ようとするのではなく、並べられた言葉を通して、寺山修司という人を読み解いていくほうが面白いかもしれないなあ、と思った。
心に残ったいくつかを抜粋。 「教育。--「よく噛むんだよ」とお父さんが言う。そこでよく噛んで毎日二時間ずつ散歩して、冷水浴をした。だがやっぱり不幸せな無能な人間が出来上がった。(アントン・チェーホフ)」
「英雄のいない時代は不幸だが、英雄を必要とする時代はもっと不幸だ。(ベルトルト・プレヒト「ガリレオガリレイの生涯」)」
「僕は詩人の顔と闘牛師の体とを持ちたい。(三島由紀夫「鏡子の家」)」
「青春は例外なく不潔である。人は自らの悲しみを純化するに時間をかけねばならない。(吉本隆明「初期ノート」)
でも、やっぱり、最後にまとめられた筆者自身の言葉がやっぱり一番いかしていたな。
「すべてのインテリは、東芝扇風機のプロペラのようだ。まわっているけど、前進しない」
「ふるさとの訛りなくせし友といてモカ珈琲はかくまでにがし」
「煙草くさき国語教師が言うときに明日という話は最もかなし」
「あたしはあなたの病気です」
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