松井雪子 講談社 2007
STORY: 父が失踪し、父が力を入れていた市民農園の畑だけが残される。父が畑関係のホームページを作っていたことや今まで父について知らなかった事実が明らかになるが…。
感想: 主人公はたぶん高校生の萌。父・隆は何も言わずにいなくなり、母・笑子と二人暮らし。笑子は仕事をする傍ら、筋トレやランニングをし、自分の体を鍛えることで隆がいなくなった悲しみを克服しようとしていた。
たまに隆の母・ハルエがやって来て、色々な料理を作っていく。ハルエは心の中で息子が不憫だと思う。それは、萌も笑子も隆を探そうとしていないから。隆の居場所がないような気がするから。
普通、どうなのだろう? 父が失踪したら、やはり一生懸命探そうとするのだろうか? それとも…。
ハルエだけが隆が行きそうな場所を探すが、見つからない。
そんな日々を送るうち、市民農園から「畑を放置するな」という通知が来て、萌と笑子は畑に向かう。笑子はあまり興味を示さないが、萌は畑仕事に没頭するようになる。
そして、萌は知る。父・隆の別の一面を…。ホームページを作って農作業仲間たちのカリスマ的存在だったこと、畑を借りている人たちと色々な交流があったことなど…。
考えてみれば、萌と同じく、皆、家族の一面しか知らないのかもしれない。その人にはその人の関係があって、その関係の中で見せる顔というのがあるのかも。それはその環境の中にいる人しか知らないのかも。
結局2人は父の忘れものを預かっているという山に向かい、そこで初めて父がどういう生き方をしたかったのかなどに少しだけ気づく。
でも、それに気づいても、父をがむしゃらに探そうとはせず、どこか世界を放浪しているのだとだけ思って、結局そこで完結してしまうのだけれど…。
なんとなくお互いの生活を脅かさないというのか…ある意味、希薄な家族関係を淡々と描いた作品だった…。
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