もちろん、あの屋上の彼らもまた、自分たちが「幸せな光景」の中にいるとは気付いてなかっただろう。
彼らがそれに気付くのは、おそらく30年も先のことなのである。
しかし、誰も30年先のことなど考えず、ましてや、30年後のある日、
誰かがあの屋上を夢に見て「ああ、ここに幸せな光景がある」と言い出すことなど、
予測できるはずがないのである。
であるのなら、それもまた、ひとつの<予期せぬ出来事>と呼ぶべきなのかもしれなかった。
思えば、ずいぶんと「不安」ばかりを探しまわった私であるが、
「幸福」もまた<予期せぬ出来事>なのだと、私は、いまにして思い当たったのである。
★Bolero 奏者�供〕輯�せぬ出来事/吉田音★
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