○プラシーヴォ○
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「こちらが、主任のオオツカです」
工場の社長から紹介され すうっと現れた男性
腕を組む、というか 右手で左の肘を、左手で右の肘を持って 片足に体重をかけて しなり、と立っていた
顔は、いしだ壱成
工場だから頭には頭髪落下防止のシャワーキャップ
でもかっこいい
「では、こちらに来て下さい」
しなり、と歩き出す
白いつなぎの上に黒いエプロン 青いシャワーキャップをかぶって
こんなに色っぽい人がいるだろうか
作業をしていると ふと 目線の中に黒いエプロンが入ってくる
顔をあげると オオツカさんがニコリとしている
私もニコリとしてみる
しばらく沈黙
「…どうですか? 疲れていませんか?」
オオツカさんの周囲は空気が緩やかに 流れている気がする
大丈夫です、と 返事すると
するりするりと別の場所へ歩いていった
しばらくして、またもや黒いエプロン
顔を上げる
「今回入ってきた人たちとは お友達ですか?」
「あ…間に入ってる派遣会社は同じですけれど 初めて会った人たちばかりです」
「ああ、そうですか」
「私、車に乗せられて連れられてきたので」 (初日、工場の場所が分からなかったので 営業の人に車で連れてきてもらった)
「…人さらいみたいですね おお、怖い」
フフ、と肩をすくめて笑いながら またどこかへふらりと消えていった
忍君ほどの情熱はもてないけれど この味気ない工場の中で 短期バイトとはいえ 日々つまらなさすぎるのは苦痛だから
この人を意味にしよう
この人をスキだと いうことにしよう
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