○プラシーヴォ○
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2001年09月29日(土) イヂをはる

「…あっちい!!」
ちゅるりと喉の奥にいきかけた湯豆腐を
熱さのあまりハム男が吐き出した。

「遅刻したバチがあたったんやわ」
冷ややかに言い放つ私を見て、ハム男が口を尖らす。

「昨日、遅くまで飲んでたのに、
10時にがちゃ子を迎えに行くなんて無理やわ
早過ぎるっちゅうねん」

「昨晩電話して確かめて、10時に来れるかどうか
確認したやんか!!!
無理なら無理ってその時言って!」
ピシャリ、と断言するとハム男は黙り込んだ。

私は時間を守らない人間が大嫌い。

こっちは約束した時間に間に合うように準備しているのに
「寝坊した〜ゴメン」
の相手の一言で
私の急いだ時間は無駄なものへと変わってしまう。

そよそよそよ、と湯豆腐屋の庭から涼やかな風がふいてくる。
しっとりと濡れたような歴史を感じさせる木の柱や
高い高い天井。

そうだ、せっかく京都まで来て
おいしい湯豆腐を食べているのに
プリプリするのはもったいない。

今日は京都に免じて許してやろうかの。

携帯が鳴った。
なべちゃんからだった。
なべちゃんは私が以前働いていた
映像制作会社で友達になった子。

「久しぶりに食事でもどうかね〜」
「いいよ〜、明日予定無いし〜」
言いながらハム男をちらっと見ると、
南禅寺というお寺の門の方へスタスタと歩いていた。
怒ったのか?

「見て見てがちゃ子〜!
寺の中にレンガで出来た橋があるう〜!」

聞いちゃいねえ。

走り回るハム男をひっつかまえて、
「明日、友達と遊んでくるよ?」
「あ、そうなの?行っといで、行っといで」

私を遊びに送りだすとき、
ハム男は本当に嬉しそうに笑う。

私と離れると嬉しいのかい?ムキー!


「入れて」
言ってしまった。
コンドーム買ってないのに。

ピルをやめたから妊娠しやすい体になってるのに。
頭の中がからっぽになって
つい言ってしまった。

ハム男がううう、と喉の奥でうめく。
そして愛撫の手をとめて私を抱きしめる。
背中を撫でる。

そして言った。

「絶対ダメ
がちゃ子がそれは一番わかってることでしょう?
今度、コンドーム買っておくから」

ありがとう。
ありがとうハム男。
そして、そのままなんとなく笑って
眠りについた。


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