○プラシーヴォ○
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決算期ということもあり、ただの派遣社員の私まで なんとなく忙しさに巻きこまれ、 ようやく会社から脱出したのは21時だった
ファッションビルの中にあって、22時30分まで営業している レストラン街に足を向ける。
そりゃそうだ。 金曜日だもの。 すでに食事を終えたらしきカップルが大勢、 人ゴミの熱気や、もしくはアルコールで顔を赤くしながら 私の横を通りすぎていく。
私は残業をすると、胃が痛くなる。 おそらく、空腹の時間が長くて胃酸がでてしまうんだろう。 痛みのあまり、前かがみになりながら、 ソバを飲みこむ。
なにやってんだろ。 なにやってんだろ、私。 近頃ハム男は金曜の夜にサッカーに行く。 日曜日も行く。 土曜日しか会えない。
「がちゃ子?明日、土曜日さ、会社の人と海に行くことにしたんだ。 日焼けしに行くんだって。どうせ曇りなのにね」
ハム男、笑ってる。 私と会えないのに笑ってるのね。
電話を切ったあと、すぐにメールした。
『そんなにサッカーが好きなら一生やってれば。 もう、電話してこないで』
こんな汚い文章でしか、 私が怒っていることを伝えられない。
1日しか会えない日を、 毎日会ってる会社の人と遊ぶのに使ってしまうなんて。
ハム男が慌てて電話をかけなおしてくれるのを待った。
でも、鳴ることはなかった。
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