singersong professor KMの日記

2011年08月19日(金) 真のマネジャー

 facebookで「今日の一言」というのをアップしている。昨日アップした言葉は下記である。

 「[神話4]マネジメントは科学であり、専門的職業である。現在はそうでないとしても、少なくとも急速にそうなりつつある。」=根拠なし
「[現実]マネジャーのプログラム−時間の配分や情報の処理、意思決定など−は、マネジャーの頭脳の奥深くにしまい込まれている。」(『H.ミンツバーグ経営論』より)

 これに対していろんな意見が寄せられた。

 第1。「的外れだったら申し訳ありません。弊社でマネージャーを目指す者に対し、「マネジメントは専門職」という意味のことを話します。それぞれの職場でトップでもマネジメントは別物、意識をすっかり変えないといけないという意味合いです。日本ではそこで一流のものが上にあがり、部下もそういう人についていくという感覚が根強いように思います。それをまったく否定するわけではありませんが、マネジメントをどう考えるか、大切だと思います。」

 少し違和感をもちつつ様子を見ていたら、次のような書き込みがあった。

 第2。「マネジメントは専門職、そうとらえる方が組織編成が柔軟に行えるでしょうね。
職場のトップというのは、職歴が長いとか、一番技術レベル高いとかということですね。仮にその人がマネジメントスキルを身につけることができたとしても(少なくともそれは必要と思いますが・・)、その人に人がついていくかは別問題ですね。リーダーシップがからんできます。」

 なるほど、リーダーシップ。新しい論点が加わった。でもこの点はいずれ考えることにしたい。さきに専門職という論点について、私は次のように書いた。

 「マネジメントに広狭二義ありそうです。「マネジメントは専門職」という場合,どちらでしょう。トップ・マネジメントもマネジメントに違いありません。これは専門職なんでしょうか。
専門職というのをどういう意味で言われているのでしょう。我々業界で,高度専門職といえば公認会計士などを指す場合が多いのですが。ある職種での専門家という意味でよく専門職という場合が多いようですが。
意外と専門職ということばを多義的に使っているのに気づきました。整理してみたいと思います。」

 そうしてさらに様子を見ていると、次の書き込みがあった。

 第3。「そう言われて気づきました。専門職という言葉を曖昧に使っています。
私がここで使った"専門職"はそれぞれの職場で身につけた知識や経験に秀でているのとは別で、組織運営管理する能力を身につけた人ということです。
また、一般的に複線型人事制度と言われる形態では、管理職待遇で部下を持たない人を専門職と呼んだりしています。」

 だんだんと議論の整理がついてきた。さらに次の書き込みがあった。

 第4。「かつて似たようなことを学んだなぁとメモを調べてみたら、
 エキスパート(熟練者)<->ノービス(初心者)
 スペシャリスト(専門職)<->ゼネラリスト(総合職)
 プロフェッショナル(有資格者)<->ノンプロフェッショナル(無資格者)
 プロ(本職)<->アマ(バイト)
と書いてありました。
「専門職」の多義性を考える場合、反意語や同意語、用例を集めてみると見えてくることがあるのかもしれません。」

 さらにまとまってきたようだ。そこに次の書き込みがあった。

 第5。「マネジメントが専門職であるという見方は、その手法や技術が、ほかの様々な業務(現場的な)に比較して、現場的なビジネススキルの延長線上にない独特なものであるという面においては、まったく専門職であると思います。また、至って人間的な素養がスキルに含まれるナーバスなものでもあるのではないでしょうか。難しい悩めるテーマですね。」

 そこで、今日、新たにミンツバーグを援用して、次のように述べた。

「現在のビジネススクールは、組織に関するスペシャリスト、たとえばマネジメント・サイエンティスト、マーケティング・リサーチャー、会計士、組織開発の専門家などを訓練する優れた業績を残している。しかし、真のマネジャーの訓練に取り組んでいるところはほとんどない。」(『H.ミンツバーグ経営論』)

 私は「真のマネジャーの訓練」に取り組みたいと思っている。

 もうおわかりでしょう。ミンツバーグが現在のビジネススクールで育てているのは「専門職」であって、「真のマネジャー」ではないと言いたいわけだ。だから昨日紹介した「マネジメントは科学であり、専門的職業である」というところで、さらにこうも言っている。「つまるところ、専門的職業とは『学習あるいは科学のある部分に関する知識』(ランダムハウス辞典)ということなのだ。」(同上)

 ある部分の知識であって、それだけでは「真のマネジャーの訓練」にはならないと考えているわけだ。

 このように、一言投げかけただけで、いろんな意見が出てきて、論点の整理が進む。まさにMBAだ。


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