singersong professor KMの日記

2002年06月23日(日) 大国・強国より豊かな国に

 先週は,いったい何をしていたのだろう。14,15,16日と証券経済学会で東京へ出張して,卒業生らと会ったことはすでに書いた。その前後に読んだ書物についても,「松村通信第44号」で書いた。そこで書いた,「漢字と日本人」「雑学・大江戸庶民事情」などで,日本人とは何かをつくづく考えさせられた。

 それにしても最近,日本,日本人を考えさせられることが多い。実は19日に内輪の研究会SCCJというNPOの研究会に参加して,ビル・トッテン氏の話を聞くことができた。そこでは,私が常々言っているように,グローバル・スタンダードは英米基準にすぎないこと,そんなのに追従してどうなる,今の日本はアメリカより豊かなのに,アメリカの真似をしてどうする,もっと日本人は自信を持て,と刺激的な話を聞いた。

 そこではっと思い出させてくれたのは,日本は豊かな国になることを目指しているのではなく,大国・強国になることを目指しているのではないか,という点だ。すでにアメリカより豊かな国であるとすれば,何をそんなに大騒ぎしているのか,それは大国・強国になろうとするから,騒いでいるのでしょう,そう言う指摘で,私自身分かっていながら,忘れかけていることを思い出させてくれた。

 かつて紹介した,ミアーズ「アメリカの鏡・日本」なども,戦前の日本軍国主義はアメリカの真似をしただけだと言っていたのを思い出した。金融ビッグバンに対する私の感じ方も同じである。ビッグバンに違和感を抱いたのは,東京マーケットを,ニューヨーク,ロンドンと並び立つものにしようという意図が明確に述べられていることである。ここには,豊かさより「大国」「強国」を目指そうという意図を感じ取った。「大国」「強国」になることを目指すか,豊かな国になることを目指すかと言うとき,私は一も二もなく豊かな国を目指すべきだと考える。そして現に今も豊かであると考える。今豊かでないのは,心であると考える。この国は,あと,心が豊かになれば,世界に誇れる国であることは間違いないと思う。ところが,西欧コンプレックスから,日本人の誇りを失った,またそれを狙ったのも戦後のアメリカの占領政策であったし,見事にそれは成功したと思う。日本が本当の意味で被占領国から脱するとき,本当に豊かな国になるのだと思う。今朝の新聞でも,ヨーロッパで,グローバリズムの裏返しとしてのナショナリズムが,近年強まっていると指摘されていたが,当然でもあると思う。

 先週月曜日,3回生のゼミ生とゼミ終了後生協で話したのだが,他国の軍事基地を許している「独立国」など存在しうるのか,それを不思議に思わないのか,この点は,寺島実郎氏も指摘している。そんな話をしていた翌日の18日に朝日新聞朝刊で,早野透氏が次のように言っていた。

 田中秀征氏は次のように述べたという。「ロンドンがヒトラーの爆撃を受けたとき,市民はチャーチルを信頼し自分たちで不発弾を処理して犠牲をいとわなかった。いざとなれば有事法制などあったってなくたって,国民と政府の信頼があれば国民は協力する」。今度の有事法制は自衛隊のことばかりで「国民」が眼中になく志が低すぎる。

 この指摘はよく分かる。有事法制論議なども,議論が些細なことばかりに拘泥していていやになる。どうも日本ではまだ被占領意識が抜けないようだ。


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