Tonight 今夜の気分
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2008年05月15日(木) 中国大地震にみる人民気質



「 意見は最終的に感情で決定され、知性によってされない 」

    ハーバート・スペンサー ( イギリスの哲学者、社会学者、倫理学者 )

Opinion is ultimately determined by the feelings, and not by the intellect.

                                 Herbert Spencer



追い詰められた時こそ、人間の本性が出やすいものだ。

言い換えれば、その人間の 「 真価 」 が試される時でもある。


中国で発生した大地震は、諸々の悪条件が重なったこともあって、救出が遅々として進まず、想定される死者数が 5万人、10万人とも言われる。

地震発生の直後、海外からの好意的な人的支援を受け入れられなかった理由が 「 道路状況の悪さ 」 であったことは、けして嘘ではない。

かつて日本でも、阪神大震災の直後に海外からの人的支援を断ったことがあるし、ことわざの “ 船頭多くして船山に登る ” という現象も考えられる。

ただ、日本と違う点は、大規模な災害救助の ノウハウ や 機材、緊急時を想定した マニュアル や 訓練が、整備されていないところにある。

だから、一人でも多く救助するためには、面子や配慮を捨て、海外からの支援を積極的に受け入れるべきなのだが、そう簡単な問題ではない。


今年の2月頃だったと思うが、普段は雪など降らない温暖地域を含めて、中国では広範囲に未曾有の大雪が降り、パニック に陥ったことがある。

私も中国と貿易をしているが、積雪による通行止めや、航空機の離発着が遅れたことで、積荷の到着が滞り、ずいぶんと困ったものだ。

そのときも、今回の大地震ほどではないが多数の犠牲者を出し、相当な数の家屋が倒壊したけれど、外は大雪なだけに、それは死活問題だった。

一部の中国人民には、そのとき 「 政府が手を差し伸べてくれなかった 」 という怒りが残っており、今でも “ わだかまり ” になっているという。

今回の地震によって、災害予防や救助施策などの 「 政府への不満 」 は ピーク に達し、当局には、なるべく外国人を招きたくない実情もある。


悲惨さは、中国政府の対応だけでなく、人民の 「 集団的アイデンティティ 」 が崩壊し、いまや人心が バラバラ になっている面にも見られる。

阪神大震災では、被災者が救助に協力したり、不足した食料を分け合ったりしたが、中国では救援物資を巡って、その奪い合いが激しいという。

いまの中国は、被災者を装った 「 振り込め詐欺 」 が横行したり、略奪や、暴行などの犯罪行為が後を絶たず、まるで収拾がつかない状況にある。

悪の象徴とされた関西の暴力団でさえ、阪神大震災のときには、近隣住民に食糧を配ったりしていたことを思えば、その違いは格段に大きい。

政府に頼らずとも、被災者が 「 自分たちで出来ること 」 はあるはずだが、個々の エゴイズム が表出し、まったく機能しない状況にあるのだ。


住民同士の助け合いにしても、政府筋の支援策にしても、中国と日本では、どちらが 「 社会主義国家 」 なのか、わからないのが実態だ。

極端な個人主義気質を持つ人民に、無理やり社会主義思想を押し付けた反動は、いづれ大きな ムーブメント となって、中国を動かすだろう。

それは避けられないことでもあるが、急速な革新は 「 天安門事件 」 のように血をみる結果になるので、中国政府は、それを恐れている。

諸外国からの同情と憐憫は集めたが、これで五輪の開催も “ お祭り騒ぎ ” には出来なくなり、首脳陣も頭の痛いところだろう。

緩やかな ソフトランディング による民主化の実現には、さらなる GDP額 の成長や、人民による政府への信頼が肝要で、ここは正念場になる。






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