Tonight 今夜の気分
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2008年05月07日(水) 今度こそ終わり : 船場吉兆



「 都合のいいことと正しいことは、めったに一致しない 」

                   チャールズ・ブロワー ( アメリカの冒険家 )

The expedient thing and the right thing are seldom the same thing.

                                 Charles Brower



概ね、倹約家は、「 チリも積もれば山になる 」 という表現を好む。

物を使い捨てず、大事にする姿勢は、リサイクル時代の思想にも適う。


大阪の高級料亭 「 船場吉兆 」 本店 が、客の食べ残した料理を別の客に回していた問題に続き、博多店 でも同様の不正が発覚した。

釈明会見で女将は、「 先代の社長は “ もったいない ” を口癖にしており、その影響からか、使い回しをするようになった 」 と重苦しく語った。

この釈明を聞いて、「 なるほど、エコロジーだね 」 とか、「 捨てちゃうのは、もったいないよね 」 と共感した人は、ほとんどいないだろう。

下手な言い訳をするぐらいなら、黙っていたほうが マシ という典型的な例だが、それにしても、この答弁は常軌を逸している。

リサイクル時代の風潮を逆手に取り、「 情状酌量 」 を願い出たつもりかもしれないが、商道徳に反する戯言は、かえって彼らの悪質さを露呈させた。


アパレルの仕事をしていた頃、異業種である食品や、医薬品の業界に従事する人たちから、羨ましがられた 「 業種特性 」 がある。

それは、食品や、医薬品と違って、「 売り場から返品された商品を、簡単に再販できること 」 であり、たしかに、言われてみればその通りであった。

商品が劣化しないかぎり、アパレルには消費期限やら賞味期限がないし、仮に少し傷んでいたとしても、値引きして販売することが可能だ。

いくら安くしたところで、客が開封した食品や、期限切れの医薬品を、再び売り場で販売することなど、許されるはずがない。

食品、医薬品など、返品再納品ができない商品群は、そのため “ ロス率 ” が高いことは常識で、コスト構造にも、その認識が含まれている。


ましてや吉兆の場合、返品、キャンセルの類ではなく、「 食べ残し 」 を販売したのだから、一つの商品を複数の客に 「 二度売り 」 したのである。

不衛生なうえに、明らかな不正であるし、前の客の食べ残しを食べさせられたと自分が知れば、このうえなく不快なはずだ。

しかも、吉兆が販売していたのは、低価格の牛丼やハンバーガーではなく、数万円以上の懐石料理であり、この点が特に許しがたい。

昨今、さまざまな企業が食品偽装問題で摘発を受けたけれど、いづれも、熾烈なコスト競争が招いた不祥事であり、吉兆とは本質的に異なる。

事業の再開後、支援していた贔屓筋も、今度こそは愛想が尽きた様子で、いまや 「 大阪商人の恥 」 となった吉兆は、もう終わりである。






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