Tonight 今夜の気分
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2008年02月09日(土) G7 : 日本の弱点は、銀行員の質にある



「 銀行とは、天気のよい時に傘を貸し、雨が降り出すと

  返せという所である 」

                       ロバート・フロスト ( アメリカの詩人 )

A bank is a place where they lend you an umbrella in fair weather
and ask for it back again when it begins to rain.

                                   Robert Frost



学生の頃、シェークスピアの 『 ベニスの商人 』 を読んだ方は、多いだろう。

そこには、「 シャイロック 」 という名の印象深い人物が登場する。


シャイロック は、中世のユダヤ人像を代表する悪評高い 「 高利貸し 」 として描写されているが、実際、シェークスピアもユダヤ人が嫌いだったらしい。

ユダヤ人が 「 高利貸し 」 として非難され始めるのは、11世紀末頃からだが、当時、金貸し業は 「 ユダイツァーレ ( ユダヤの本業 ) 」 と呼ばれた。

その影響か、今日でも世界的に 「 ユダヤ人 」 と聞くと、すぐにお金持ち、経済支配等という既成の概念と結びつけて考える人が多い。

中世以前も、「 ユダヤ人 」 という言葉は、特にキリスト教文化圏で宗教的差別概念として用いられ、社会的に忌み嫌われやすい対象ではあった。

少数派の異教徒、無国籍放浪者として、劣等、軽蔑、罵りの対象であったユダヤ人が、なぜ 「 金貸し 」 に転じたのかは、明確な歴史的根拠がある。


第二次大戦下、独裁者ヒットラーによるユダヤ人の大量虐殺は有名だが、それより何世紀も前から、彼らは、世界中で迫害されてきた歴史を持つ。

迫害の大半は、改宗を迫ったキリスト教徒によって行われ、改宗に応じないユダヤ人は、宗教会議で、キリスト教徒から隔離する方針を打ち出された。

ユダヤ人にとって、金貸し業が 「 選択の余地のない職業 」 となったのは、1215年に開かれた 「 第4回ラテラノ宗教会議 」 以後といわれている。

彼らは公職から追放され、職業組合ギルドから締め出され、また、店舗を構えて商売を営むことも、農地を所有することも許されなくなった。

そして、ほとんど全ての職業から締め出されたユダヤ人は、当時、下賎な職業としてキリスト教徒に禁じていた 「 金貸し業 」 に就いたのである。


いまでこそ堂々と看板を掲げているが、昔は金貸し業 ( 現在の銀行など ) という稼業は 「 卑しい商売 」 とされ、キリスト教徒には禁じられていた。

汗水たらして働かず、何も生産せず、金融のみによって自己の利益を貪ることを、農業、漁業、工業、商業などと区別し、忌み嫌っていたのである。

ユダヤ人は、彼らの自由意志でなく 「 強いられた生きる道 」 として金貸し業を始めたのだが、結果的に、それは彼らにとって格好の商売となった。

迫害により、いつ追放されるかわからぬ居住不安定な彼らにとって、金貸し業は、お金さえあればどこへ移住しても生きられる術となったのだ。

その後、彼らは欧州諸国に軍費を貸し出したり、経済的支配を高めたが、他民族との確執はくすぶり続け、果てはナチ時代へと突入していった。


ユダヤ人が金貸し業を始めた数百年後、ロスチャイルドは銀行帝国を築く傍ら、宮廷ユダヤ人としてプロイセン ( 現在のドイツ ) を影で支えた。

意外に思う人も多いだろうが、居住権と引き換えに資金援助を受ける形で、ユダヤ人とドイツは、一時期、とても友好的な関係を保っていたのだ。

しかし、第一次世界大戦の敗北によって、ユダヤ人の率いる銀行業界は、ドイツ人からみて 「 非協力的だった 」 という反感を買うようになった。

事実、戦局を見極めながら、彼らは投資先を自由に操って、ドイツが不利とみるや他方に資金を投入し、国家の疲弊とは裏腹に私財を守った。

敗戦で莫大な負債を背負わされたドイツ国民にとって、ユダヤ人の銀行家は、何もせずに 「 漁夫の利を得る “ けしからん集団 ” 」 と恨まれたのだ。


第二次大戦下におけるユダヤ人大量虐殺という恐るべき出来事の結果、ユダヤ人に対する強い同情と、キリスト教諸国の深い反省が起こった。

それにより、古来の宗教的ユダヤ人観は大幅に修正されたが、一方では、迫害を逃れて諸国に飛散したユダヤ系資本を、脅威に感じる人も増えた。

金融ビッグバン以降も、「 いざとなれば公的資金を注入し、潰させない 」 という日本の銀行と違い、海外の金融マンは危機感を持っている。

ユダヤ系は血筋的に 「 金融業に命を賭けている 」 者が多く、反ユダヤ系も、それに負けないよう、日々精進しているのが海外の銀行家だ。

好き放題にやらかして失敗しても、公務員と同じで 「 親方日の丸 」 なんてスタンスで働いている日本の銀行が、対抗できるものではないのである。


このたび、東京で開催された G7 ( 7カ国財務相・中央銀行総裁会議 ) の様子を見たが、日本側の発言など、誰も聞いていない様子がみてとれた。

日本で銀行などに勤めようとする連中は、昔のユダヤ人と違って、無数の選択肢がある中で、あえて 「 漁夫の利を得る 」 仕事を選んだ人々だ。

サブプライムローンの被害にしても、日本は 「 もっとも少ない 」 のに、株価下落などの影響を大きく受け、各金融機関は何の対策も講じられない。

過去のドルショック、オイルショックも、バブル崩壊も、それを乗り切ったのは産業界の努力であり、常に日本の銀行は無能ぶりを露呈してきた。

どれだけ各企業が創意工夫を重ね、技術革新や研鑽を続けても、銀行員の能力差、志の低さは歴然で、それが日本経済の 「 大弱点 」 である。






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