| 2006年10月11日(水) |
北朝鮮が得たカードと失ったカード |
「 好戦的な国民など存在しない。 好戦的なリーダー達がいるだけだ 」
ラルフ・バンチ ( アメリカの政治科学者、外交官 )
There are no warlike people - just warlike leaders.
Ralph Bunche
パレスチナ問題の仲裁役として、1949年の停戦協定に導いた立役者。
ヨーロッパ民族以外の個人として初めて、ノーベル平和賞を受賞した。
アメリカの新聞各誌は、北朝鮮などの独裁国家を取り上げるとき、頻繁に 「 a warlike nation ( 好戦的な国家 [ 国民 ] ) 」 という表現を用いる。
そんな彼らもまた、けして 「 pacifist ( 平和主義者 ) 」 とは呼ばれないが、両者を分かつ決定的な違いは、「 民主主義国かどうか 」 という点にある。
民主主義の最大の効能は、「 独裁者を生み出さない 」 という利点にあり、国民の意思を反映させ続けないかぎり、民主国家では政権を司れない。
冒頭の言葉を信じるならば、個々の国民はけして好戦的でなく、平穏を望んでいるはずなので、その意思を裏切るリーダーの存続を認めない。
無軌道な暴走が罷り通るのは、民主主義以外の国にかぎられる。
北朝鮮が核実験を実施したことで、世界中が震撼し、憤りを示している。
そんな中、まれに 「 たいしたことじゃない 」 とか、「 アメリカは、それ以上に核を保有しているじゃないか 」 などと、天邪鬼なことを言う人もいる。
事実、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国、インド、パキスタンの各国が核を保有し、イラン、イスラエルも、核保有の可能性があるとされる。
だが問題は 「 持っているかどうか 」 よりも、「 誰が持っているか 」 であり、アメリカと北朝鮮を同列に並べて判断するには無理がある。
わかりやすく言うと、「 板前さんが包丁を握っている 」 のと、「 精神異常者が包丁を振り回している 」 状況の違いで、周囲の危機感が違って当然だ。
まさに 「 キチガイに刃物 」 ともいえる状況だが、戦略的外交手段として、北朝鮮が、有効な 「 一枚のカード 」 を手にしたことは間違いない。
ただしそれは、中国、韓国の後ろ盾という強力な 「 二枚のカード 」 を犠牲として失う リスク も避けられないため、あまり得策とはいえないだろう。
中国は、過去において北朝鮮擁護の立場を貫き、7月のミサイル発射事件の後も、国連の制裁決議に反対する意思表示を示した。
孤立する北朝鮮と、包囲する国際社会の仲裁役を果たすべく名乗りを上げたまではよかったが、今回の騒動で、見事に恥をかかされた格好となった。
韓国は、「 太陽政策 」 と呼ばれる融和路線で、粘り強く親密化を目指してきたが、もはや庇いきれない状態となり、その努力も水泡に帰した。
専門家によると、たとえ核実験に成功しても、ミサイルに搭載し遠隔攻撃を仕掛けるなど 「 軍事転用 」 するには、数年の歳月を要するという。
つまり、当面は 「 日本が核攻撃に見舞われる 」 などの絶望的危機は起きそうにないが、逆の見方をすれば、数年後に危機が訪れる可能性は高い。
それを避けるためにも、「 金正日体制の崩壊 」 を果たす以外に道はなく、今後は、より一層の経済制裁、外交的圧力を加えることになるだろう。
その過程で、自暴自棄となった北朝鮮が、思いがけない暴挙に出る危険も否めないが、臆せず、怯まず、周辺諸国は立ち向かわねばならない。
もちろん、日本は民主主義国家なので、その有事に 「 憲法9条を抱いて、無条件に殺されたい 」 という意見の方が多ければ、それに従えばよい。
バンチの示す冒頭の言葉に嘘はなく、すべてあらゆる国の国民は、好んで戦争に荷担する意思などなく、安らぎと平和を望んでいると思う。
しかし地上には、己の野心や欲望のために、国民の安寧を犠牲にすることも厭わない 「 独裁国家の好戦的なリーダー 」 がいて、調和を破壊する。
サダム・フセインもその一人で、私は 「 イラク戦争は必要だった 」 と考えているが、世間には、憲法やら倫理論を持ち出して反対する人もいる。
面白いことに日本には、「 イラク戦争には反対だが、北朝鮮はやっつけろ 」 という、好戦的なのか、平和主義なのか、よくわからない人も多い。
これが日本にとって 「 戦後最大の危機 」 であることは間違いなく、日本の 「 好戦的でない人々 」 がどのような意思を示すのか、その点も興味深い。
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