Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2006年09月08日(金) 19歳 殺人犯の自殺



「 死刑の判決を受けても、文句一つ言わない人は、たくさんいるだろう。

  運命の女神が、もう片方の手に握っている “ 生きよ ” という判決から

  逃れられるならば 」

         T・E・ロレンス ( アラブ対トルコ独立運動を指導した英雄 )

Many men would take the death-sentence without a whimper to escape
the life-sentence which fate carries in her other hand.

                                 T.E.Lawrence



映画化され有名になった 「 アラビアのロレンス 」 が、遺した言葉である。

生涯を、波乱万丈の冒険に投じた英雄でさえ、生きる難しさを説いている。


人生のある一時期に、「 自分だけが不幸だ 」 と思い込んだり、疲れたり、不愉快なことがあったりして、「 死にたくなる 」 人は多い。

気持ちが沈んで内省的になったときに、「 死んだほうが楽かもしれない 」 と思う程度の誘惑と、葛藤した人も少なくないだろう。

そういう誘惑に勝つためにも、こんな思いは、ごくありふれた平凡なものであり、けして奇異な感情ではないと、承知しておいたほうがいい。

幸せに見える人も、多くは努力して辛苦に耐え、ようやく、苦労の数に幸せの数が追いついてくるようになっただけで、さほど恵まれた境遇でもない。

自分のことしか考えずに、周囲が見えていないから 「 自分だけが不幸だ 」 などと 「 うつ状態 」 に陥り、とんでもない勘違いをしでかすのである。


生きることの大変さは、誰しも経験しているので、思わず 「 死にたくなる 」 心情を、まるで理解できないわけではない。

ただ、「 理解できる 」 ことと、「 許せる 」 ことは違う。

実際、過去に自殺を企図して、いまでも日常的に 「 死にたい、生きることが辛い 」 と口にする人なら、他人が自殺したい気持ちも理解できるはずだ。

ところが、その息子が彼に 「 では、僕も自殺します 」 と言った場合、「 私も死にたいので気持ちはわかるから、死んでいいよ 」 とは言わないだろう。

自分が死ぬのは 「 正しいこと 」 で、他人が自殺するのは 「 悪いこと 」 といったふうに、「 自分だけは特別 」 という異常な感覚が、そこに存在する。


結局そういう人は、長く険しい人生に、勇気をもって耐え抜く忍耐も嫌だし、自分の愛する家族が死んで、その悲しみに耐えることも嫌なのである。

自殺企図者でさえ、自殺という行為は、家族への愛情も果たさず、自分に期待した友人、知人を平気で裏切ることであると、他人には厳しく語る。

その矛盾を知りながら、ことあるごとに 「 自殺するぞ 」 と吹聴したり、たまに、首を吊るポーズなどを示す厄介者が、特に日本には多い。

彼らが、「 命を粗末にしている 」 ことは、本人も含め誰の目にも明らかなのに、他人には 「 命は尊いもの、命を大事にしましょう 」 などと言う。

その身勝手さには、呆れ返って笑うしかないのだが、「 自分は特別 」 という異常な思考回路は、いつまでたっても治らないのである。


山口県で女子学生を殺害した19歳の男子が、遺体で発見された。

殺害直後に首を吊って自殺したらしく、遺体は腐敗し、一部は白骨化し始めていると、状況について発表された。

殺人という、取り返しのつかない凶行ではあるが、19歳という若さからか、世間には 「 何も自殺までしなくても ・・・ 」 と、残念に思う人が多い。

また、程度の低いマスコミは、「 少年を “ 自殺に追い詰めた ” 理由 」 など追求し始め、その 「 責任者 」 をデッチあげようとする。

自殺に追い詰めた理由は、「 罪もない少女を殺した 」 狂気の犯行であり、その犯人も少年自身であり、それ以外には何の理由も、誰の責任もない。


殺人を犯してから自殺したわけだが、逆に、「 自殺するような “ 命を粗末にする クズ ” だから、他人の生命を平気で奪った 」 のだとも言える。

生きることは、なかなか大変な仕事だけれども、けして自分だけではなく、誰もがその辛さに、もがき苦しみながらも、大部分は、それに耐えている。

たとえ苦労に耐え切れず、死にたいと思ったとしても、「 命を粗末にしてはいけない 」 ことを思い出し、自分も他人も傷つけないように努力する。

それが、「 世間の 99% 」 であって、それでも格好つけて 「 自分は特別 」 だと言い張るなら、それは即ち 「 100人中の ビリ 」 と認めるのと同じだ。

少年は首を吊り、司法の追及から逃れたかもしれないが、その両親は自殺後も謝罪文を綴り、被害者の遺族の無念も、けして晴れることはない。






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