| 2006年01月11日(水) |
「 お客様第一 」 という目的 |
「 成功の秘訣とは、目的に忠実であることだ 」
ベンジャミン・ディズレーリ ( イギリスの首相 )
The secret of success is constancy to purpose.
BENJAMIN DISRAELI
金融再編の波を受け、「 東京三菱UFJ銀行 」 が発足した。
なんとも長ったらしい名前で、書くのも面倒なくらいだ。
過去において日本の各銀行は 「 ぬるい世界 」 にどっぷりと浸かってきた背景があり、その影響から 「 殿様商売 」 的な体質が抜けない。
それでも、独自の企業努力で健全な経営に努めてきたところに関しては、特に政府・国民が迷惑を被ったわけでもないし、文句を言うつもりもない。
そういう点からみて三菱銀行は、“ 数少ない ” 比較的優良な銀行であったと評価できるのだが、成り行き上、余計なお荷物を背負わされたようだ。
アホな銀行マンが動きバカな上層部がサインしたせいで、日本経済を狂わせた病原菌みたいな銀行が大半を占める中、それは希少な存在だった。
長ったらしい名前なぞやめて、「 三菱銀行 」 に戻したほうが体裁もよいし、利用者の便も良いと思うのだが、内部事情で叶わないのだろう。
この銀行のHPを開いてみると、「 倫理綱領・行動規範 」 という頁があり、二項目目のところに 「 お客様本位の徹底 」 と記されている。
「 常にお客さま本位で考え、お客さまのニーズに最も適合する金融サービスを提供し、お客さまの満足と支持をいただけるよう努めます 」
なるほど、ごもっともな意見であり、立派な企業ポリシーだ。
しかしながら、年末年始を振り返ると、三井住友銀行が無休でATMを稼動させていたのに対し、ここは年末〜三が日まで、一斉に休業させていた。
それは、「 お客様のニーズに最も適合する金融サービス 」 なのだろうか。
合併によるシステム障害や、不測のトラブルを防ぎたいので万全を期したという論理もわかるが、それはあくまでも 「 内部事情 」 である。
一般の利用者にとっては 「 知ったこっちゃない話 」 であり、お客に迷惑を掛けなければ合併できないのなら、してくれないほうがいいのだ。
殿様商売の企業、レベルの低い企業の共通点は、「 内部事情を不可抗力のように語り、さも当たり前のように理由づける 」 ところである。
何か問題があれば、「 お客に不便を掛ける方法で解決すればいい 」 という発想を、何の疑問もなく実行する習慣が、彼らには定着しているのだ。
よくサービス業などで、そういう企業からの転職者が 「 あいつらは使い物にならん 」 とぼやかれているのは、そういう習性に大きく起因している。
銀行だけではなくて、本来、もっともお客さまを大事にしなければいけない 「 接客販売業 」 でも、そのような低レベルの企業は存在する。
全国展開をする某大手スーパーの某大型店に、夕方、仕事で訪問した。
店内は買い物客で混雑しているが、レジ係以外の従業員は皆無で、商品の価格や、目当ての商品の陳列場所を尋ねたいお客が困っている。
実はその時刻に、大半の従業員は裏の商品倉庫に召集されており、中堅社員がリーダーとなって、「 挨拶トレーニング 」 なるものが行われていた。
面白そうなので、その様子を見学してみることにした。
まず、リーダーが挨拶し、このトレーニングの意義を説明する。
我々はお客様を第一に考えており、お客様に気持ちよく、楽しくお買い物をしていただくためには、笑顔で、大きな声で挨拶をする必要がある。
そう告げた後、「 ア・エ・イ・ウ・エ・オ・ア・オ 」 定番の発声練習である。
そして、数十人の従業員が二列に向き合って並べられ、リーダーが大声で 「 いらっしゃいませッ! 」 と叫び、全員の注目を集める。
この声量が基準となり、端から順番に従業員が、同程度の 「 いらっしゃいませッ! 」 を一人づつ叫んでいくように命じられる。
中年の社員や、パートさんは手馴れているのか、うまく声が出せるのだが、若いアルバイトの中には、照れくさくて声が出せない人も多い。
大きな声が出れば合格なのだが、声が小さかったり、笑顔でなかったりすると 「 やり直し 」 を何度も命じられ、なかなかに厳しいものである。
ようやく15分後に散会し、各従業員は店内・店外の持ち場に戻った。
最後のほうまで 「 やり直し 」 をさせられていた若いアルバイトの男性の後から、私も 「 練習の成果を見届けてやろう 」 と思って店内に入った。
店内には当然、多くのお客がいて大混雑の有り様である。
ひっきりなしに客が行き交うけれども、彼は無言で持ち場へ向かい、その後も黙ったまま無表情で、入荷した商品を陳列棚に並べている。
彼ばかりでなく、周囲の従業員も同様で、「 挨拶トレーニングで遅れた分 」 を取り戻そうとするかのように、大忙しで黙って作業に没頭している。
そこへ、先ほどのリーダー社員がやってきたのだが、彼も行き交うお客には無関心で、手にした台帳と売り場の商品を見比べ、首をひねっている。
夕方の買い物客で込み合う食品売り場の喧騒はあるものの、どこからも 「 いらっしゃいませッ! 」 の声は聞こえず、静かなものである。
笑い話のようだが、ようやく 「 いらっしゃいませッ! 」 と聞こえたと思ったら、売り場に設置された機械から鳴る録音テープの音声だった。
今回、私の訪問目的であった 「 この店舗のナンバー2 」 である方に対し、ちょっとこれではまずいのではないかと、おそれながら進言してみた。
すると彼は、「 そうですね、ご指摘の通りで頭を痛めていますよ 」 と認め、このままではいかんので、解決策を考えましょうと言った。
で、具体的に解決策は何かと尋ねると、「 挨拶トレーニングの回数を増やし、お客様第一と書いた紙をアチコチに貼る 」 といった答が返ってきた。
それで解決すると思いますかという私の問いに対し、彼は少しむくれながら 「 うまくいくかどうかわからないが、何かしないとね! 」 と言い返した。
問題の本質を理解していない人間が上にいて、成熟した組織が育つはずがないという典型的な例で、このスーパーが不振な理由も見えた気がした。
彼らの悪習は、この 「 何かしないと 」 という言葉に集約されている。
結果がよくても悪くても、「 何かした 」 か 「 何もしていない 」 かが大事だという低次元な発想であり、無益なパフォーマンスに時間を浪費している。
よく、「 結果重視 」、「 成果主義 」 という言葉を聞いて、途中のプロセスや努力、行動などはどうでもいいのかと、意味不明な質問をする人がいる。
結果重視、成果主義の世界で重要なのは、「 結果にむすびつく努力 」 ということであり、よい結果をもたらさない努力は、認められないのである。
訓練や張り紙を増やすよりも、「 目的は何か 」、「 誰のためにやるのか 」 といった 「 方法論よりも目的が優先 」 という発想が、彼らには必要だ。
目的を見失った企業が、「 わが社のポリシー 」 なんて掲げたところで、会社がよくなるわけでも、お客が喜ぶわけでもない。
ちなみに私も 「 吹けば飛ぶような会社 」 を一つ持っているが、心にもない 「 お客様第一 」 とか、できもしない 「 地球平和 」 なんて社是は無い。
しいて掲げるなら、「 利益をあげて、従業員とその家族が、できるだけ健康で豊かな生活を実現できること 」 が、わが社のポリシーである。
多くの会社が 「 お客様第一 」 という文言を社是に含めようとするが、本当にその言葉の意味に対して 「 覚悟 」 ができているのだろうか。
顧客への責任を貫く覚悟というよりは、なんとなくフィーリングで使っている企業のほうが多いように思うのは、はたして私だけだろうか。
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