Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2005年07月17日(日) 試合のルールは、負けてから否定してはいけない



「 自分がやり遂げられないことを引き受けてはなりません。

  約束は注意深く守りなさい 」

              ジョージ・ワシントン ( アメリカ合衆国初代大統領 )

Undertake not what you cannot perform but be careful to keep your promise.

                          GEORGE WASHINGTON



いくら頑張っても収入が増えないようでは、なかなか仕事に傾注しにくい。

ほとんど多くの人は、ご自分の活躍に見合った報酬を期待している。


単に、「 生活に必要な金額だから 」 という基準だけでなく、人並み以上の成果を挙げたという自負のある方の多くは、それなりの報酬に期待する。

それは、「 業績を挙げた自分に対する、会社側の評価 」 がどの程度なのか、明確に数量化される瞬間でもあり、働く人が気にするのも当然の話だ。

職種によっても異なるが、仕事の報酬が 「 やっても、やらなくても同じ 」 という状態と、「 貢献者には還元する 」 状態では、全体の士気が違ってくる。

だから、特に営業職などを中心として、「 実力主義、成果主義 」 という名目で人事考課を行い、能力給、報奨金などの制度を導入する企業も多い。

過去の、誰しもが 「 公平 」 という考えから、各々の成果に応じて分配する 「 公正 」 という考え方に、報酬のシステムが変わってきたのである。


富士火災海上保険の男性社員( 52歳 )は、営業成績で増減する成果主義的給与制度の結果、6月の手取り額が 「 約2万2千円 」 になったらしい。

この社員の6月度給与は額面 11万5千円 で、所得税、社会保険料などが控除された結果、実際の支給額がそのようになったという。

男性は、「 これでは家族を養えない 」 と、生存権を定めた憲法に違反するなどとして、東京地裁に 3−5月の平均給与支払い等の仮処分を求めた。

たしかに、それでは家族どころか、自分一人が生活するのも厳しいだろう。

そういえば先日、友人の一人に聞いた話では、飼い犬が贅沢で安物の肉は食べないから、そのエサ代だけで 「 月に 3万円 かかる 」 と言っていた。


いくらなんでも 「 2万2千円 」 というのは、可愛そうな気もする。

ただ、だからといって、この社員が主張している 「 生存権 」 という権利を、会社機構側が個人から剥奪したとも認め難い。

関西の笑いの殿堂 「 吉本興行 」 には、月収どころか 「 年収3万円以下 」なんて芸人も、ごろごろ居てまったく珍しくもない。

当然、それだけで生活できるはずもないから、彼らはアルバイトに精を出したり、先輩芸人に弟子入りしたり、実家の援助を受けたりしている。

スターになれば巨万の富も夢ではないが、大部分は夢半ばにして挫折し、別の生き方を目指すことになる。


吉本の芸人さんと保険会社の社員さんを同列に比較できないという意見もあるだろうが、こと 「 生存権 」 に関しては、まったく平等のはずである。

どちらの命が重いとか、軽いとか言う人もいないだろう。

またいづれも、「 うちの会社は成果主義なので、結果によってはこのような低い金額になることがあり得る 」 という説明を、事前に受けていたはずだ。

会社が身柄を拘束したのならともかく、「 収入の安定している別の仕事 」 に転職する選択肢も、彼らには与えられているはずである。

そこで、「 その給与システムで働き続ける 」 という覚悟をした以上、いくら所得が低くても雇用契約は有効で、「 生存権 」 に抵触するとも思えない。


逆に、驚くほど業績を伸ばした社員がいて、会社が破綻するほどの月収を得たとしても、会社が 「 存続権 」 を盾に、支払わないわけにはいかない。

一度、契約を結んだ以上、正当な理由のないかぎり変更は許されない。

この 「 月収2万2千円 」 という事情は、「 結果によっては予測がついた 」 だけに、正当な理由とみなすのは難しいような気がする。

つまり、給与システムに関する事前説明があったのなら、本人は給料日を待たずとも、「 あぁ、この調子なら2万円だな 」 と気づいていたはずだ。

給料明細をみて愕然としたという話は事実でなく、事前に、転職するなり、別の収入源を開拓する時間 ( 機会 ) はあったとみるのが自然だろう。


申し立てをした社員さんばかりを責めるような書き方になったが、問題点はこの社員さんが 「 契約を不服とせず、同意した 」 というところである。

それが、「 成績がよければ大金が入る 」 という狙いだったのか、「 給与は下がるだろうけど、辞めたくない 」 という理由だったのかは知らない。

世間では 「 フルコミッション ( 完全歩合制 ) 」 という賃金形態も珍しくなく、そのような契約下では 「 最低賃金 」 が支払われる保証もない。

お気の毒には思うけれど、もし彼が、「 成果が挙がり莫大な報酬を得た 」 ときには、この制度に対して不満の一つでもこぼしただろうか。

つまり、「 不満があるなら、契約の更改時に争うべき 」 であって、悪い結果が出たからといって制度を問題視するのは、少しおかしいと思う。


個人的な見解だが、よい国家の定義は 「 人一倍努力した人間が報われるけれど、誰もがある程度、まんべんなく幸福を享受できる 」 のが理想的だ。

だから、「 誰もに最低限の生活保障が与えられた上で、過剰分を貢献度に応じて成果配分する 」 というのが、ベストのようにも思う。

事実、国全体が 「 成果主義のみ 」 という偏った仕組みは、弱者救済や、福祉といった問題が疎かになり、それでは文明国といえない。

ただし、各企業、各職場においては、「 安定した給料 」 とか 「 一攫千金 」 といった様々な賃金形態や、成果報酬制度があってもいいはずだ。

ここで、「 いや、最低○○万円は保証しなさい 」 なんて判例が出たら、成果主義制度自体の存続が難しくなるわけで、経済システムに矛盾が生じる。


とにかく、「 試合に負けたから、ルールに文句をつける 」 のはおかしい。

今回、富士火災海上保険では 「 営業成績で増減する 」 成果主義的給与システムだったのだから、「 減 」 の人もいれば 「 増 」 の人もいただろう。

ここであくまでも、生活保障を理由として 「 平均値 」 みたいなことを要求するのであれば、不足分は会社からではなく、「 増 」 の人から奪うしかない。

会社は、「 減 」 の人に支払わなかった分の報酬を、制度上 「 増 」 の人に支払ったのだから、当然、そういうことになるだろう。

厳しい現実を前に、まことにお気の毒な話ではあるのだけれど、ちょっと 「 この訴え 」 は理不尽に思うし、個人の責任による部分が大きいと思う。






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