Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2005年07月14日(木) カウンセラー的な相談の受け方



「 自分より立場の弱い人への接し方に、人の偉大さは現れる 」

             トーマス・カーライル ( イギリスの歴史学者、文筆家 )

A great man shows his greatness by the way he treats little men.

                              THOMAS CARLYLE



直訳では 「 身分の低い人 」 となるが、「 立場の弱い人 」 に置き換えた。

ビクトリア時代イギリスの作者なので、「 身分 」 表現が用いられている。


前回に続いて、「 相談 」 についての話。

人の話を聞くときには、たとえば取材のように 「 こちらから先に声を掛けて聞き出す 」 場合と、先方から 「 聞いて欲しい 」 と言ってくる場合がある。

誰かの 「 相談を受ける 」 というのは、まさしく後者のケースにあたる。

この場合、とくに気をつけたいのは、つい自分の立場を 「 話したいのなら、聞いてやるよ 」 という上位に置いてしまうことである。

たしかに話し手は、相手を聞き手として選んでいるのだが、だからといって必ずしも、相手を上の立場に置いて、お伺いを立てているとはかぎらない。


それが仕事上の報告であれば、相手を上長と認めて話すケースもあるが、個人的な悩み、不平不満、愚痴などの場合は、けしてそうではない。

話し手側は、相手を上長としてではなく、「 あなただったら、私と同じ立場に立って理解しようとしてくれるだろう 」 と、どこかで期待しているのである。

それを勘違いして、「 相談された自分のほうが、話し手よりエライ 」 とか、「 知識、経験が豊富だ 」 とか、「 人間的に優れている 」 と思う人もいる。

そういう 「 思い込み 」 が強いと、どうしても必然的に、聞く態度も 「 上から見下したような姿勢 」 になってしまう。

まして、相手が年下だったり、職位が自分より下だったりすると、間違いを正すなり、アドバイスするなり、何か 「 してあげたく 」 なってしまいがちだ。


ところが、相手がハッキリと 「 教えてくれ 」、「 アドバイスしてくれ 」 と言ってくる場合を除いて、助言や忠告は 「 大きなお世話 」 になることが多い。

問題解決の助力をしようとする心構えは立派だが、そこに重点を置き過ぎると、相手の 「 話したい 」、「 聞いて欲しい 」 という欲求を遮りかねない。

途中で話の腰を折ったり、話し終わらないうちに結論を与えたり、聞き手側の信じる 「 常識 」 に話を誘導したりすると、話し手側にストレスが残る。

相手と同じ目線に立ち、何の助言も邪魔もしないで、言いたいだけ話させることによって、はじめて相手は 「 開放感 」 を得られるというケースが多い。

カウンセラーやコンサルタントなどの 「 話を聴く専門家 」 が、一般的な学校の先生や、企業の管理職と違うのは、まさにそういう部分でもある。


テレビのワイドショーなどで、顔を伏せた素人の悩み事相談に、芸能人やら各界の著名人がコメントを出し合うコーナーがある。

そこでは、コメンテーターが様々な意見を出し、あるいは核心に迫る質問を浴びせて相談者を追い込んだり、主張を否定したりもする。

場合によっては、司会者までもが相談者に詰め寄り、言語道断とばかりに主張を退けたり、ときには説教していることもある。

番組的には、それぞれのタレントが一つのテーマに対してどのような個性的なコメントをするかが焦点で、視聴者の多くもそれを楽しみにしている。

相談者の悩みが解消するかどうかは二の次で、相談者のほうがタレントや司会者から叱られて、まともに話を聞いてもらえていないケースも多い。


そういった番組が 「 悩み相談 」 として当たり前のように放送されていることも、多くの人々を 「 聞き下手、相談され下手 」 にしている。

相談事というものは、「 良い解決策 」、「 良い答 」 を示すことが、必ずしも相談者の満足度を得るとはかぎらないのである。

むしろ、「 間違ったことを言っているなぁ 」 と感じても、相手の感情を否定せず、黙って受け止めてやるほうがいい場合もあるのだ。

ネット上では、「 不倫日記 」 を書き綴っている人の掲示板に 「 良識派 」 が正論を書いて一悶着するのも、こんな状況に似ている。

ただし、この場合は 「 公序良俗に反する行為を堂々と公開する 」 といった別の倫理的な問題に抵触するので、不倫側に分が悪いとは思うが。


現代人の多くは、何らかの悩みを持っていて、誰かに相談したい、心行くまで話を聞いてもらいたいという欲求を抱えている。

ところが、人の話を聞くのが上手だったり、聞く姿勢が出来ているという人は、とても少ないのが現実である。

カウンセラーという職業の人間は、けして世間の万事に通じているわけでも、特別に人生経験が豊富だったり、人格的に優れているわけでもない。

ただし、「 聞く技術 」、「 聞く姿勢 」 については、特別な訓練を受けており、少なくとも 「 気持ちよく話させる術 」 は心得ている。

そして解決策は、「 与える 」 とか 「 導く 」 のではなく、「 気づかせる 」 のが、最善の方法であることを知っている。






↑ エンピツ投票ボタン です。 一度クリックする毎に筆者が踊ります。

My追加


 < PAST  INDEX  NEXT >


Oldsoldier TAKA [MAIL]

My追加