| 2005年06月06日(月) |
喉元過ぎれば熱さ忘れる二人 |
「 愛は心にあいた穴 」
ベン・ヘクト ( 作家 )
Love is a hole in the heart.
BEN HECHT
1950年代のハリウッド映画には、私の好きな作品が多い。
映画 『 サンセット大通り ( 1950 米 ) 』 も、その一本である。
売れない脚本家のジョー ( ウイリアム・ホールデン ) は、借金取りに追われる途中で、サンセット大通りの荒れ果てた屋敷に逃げ込む。
そこには、年老いたサイレント時代の 「 往年の大女優 」 ノーマ ( グロリア・スワンソン ) が執事と二人で、ひっそりと暮らしていた。
すっかりファンには忘れられた存在の彼女だが、今でも自分は人気があると思い込んでいて、脚本家のジョーに新作の執筆を依頼する。
徐々にエスカレートする彼女の狂気と、仕事を超越して支配しようとする情愛に嫌気がさしたジョーは、やがて屋敷を後にして出てゆく。
最後は、彼女がジョーを背後から射殺し、悲劇的な結末を迎える。
全体的に暗い雰囲気だが、虚構と現実が一体となったハリウッド内幕物の名作で、サスペンス的な作品として観ても、秀逸な仕上がりになっている。
オープニングシーンでは、射殺されてプールに浮かぶジョーの死体が、なぜこんなことになったかを回想する場面から始まる。
当初、このオープニングシーンは、死体安置所に並ぶ死体同士が、自分の死んだ理由を語り合うというブラックな映像を準備していたらしい。
しかし、試写会で観客から失笑を買ったり、悪趣味だという批判が多かったので、劇場公開を半年延ばして、撮り直したという逸話がある。
その結果、このような 「 プールにぷかぷか浮かびながら、ぼんやりと回想する 」 というオープニングが、完成したのだという。
今夜は、この 「 プールに浮かんでぼんやりと回想 」 という設定に、比較的近い感覚を持ったような気がする。
私の場合は 「 プール 」 ではなく 「 ベッド 」 で、水や死体の代わりに、もうちょっと温もりのある重みが、左腕に預けられていた。
なぜ、こうなったのだろう。
もちろん、記憶喪失でも痴呆でもないのだから、今朝起きてからそれまでのことを覚えていないわけではないが、ふと、そんなことを考えてしまう。
おそらく、それは 「 計画外の出来事 」 であり、なんとはなく成り行きでそうなってしまったから、そんな風に考えてしまうのだろう。
昔の恋人というのは、一度は惚れ合った関係なのだから、「 好きなタイプ 」 であることは間違いない。
しかし、一度別れたのだから 「 嫌になった理由 」 があることも事実であり、再び交際したところで、問題が解決されていなければうまくいかない。
二人とも、そんな単純な仕組みがわからないほどお馬鹿さんではないつもりだが、なかなか杓子定規には物事が運ばないものである。
さて、これからどうしたものだろう。
水のないプールにぷかぷか浮かびながら、ふと、自分たちに対して 「 喉元過ぎれば熱さ忘れる 」 なんて諺を思い出し、苦笑しつつ車で送っていった。
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