「 中年とは、心の広さとウエストの細さが入れ替わること 」
ボブ・ホープ ( アメリカのコメディアン )
Middle age is when broadness of the mind and narrowness of the waist change places.
BOB HOPE
最近、ちょっと嬉しい変化がある。
あまり周囲には気付かれていないが、自分だけは知っている。
それは、「 お腹周りの贅肉がシェイプアップされてきた 」 という身体的変化で、気になっていた 「 中年太り 」 に歯止めがかかった感じである。
中年男性の肥満は、女性と違って、たとえば 「 “ 貫禄が出てきましたね ” と他人に誉められる 」 など、あながち印象を悪くするばかりでもない。
だから余計に、油断していると肥満が進むし、ダイエットに関して無頓着になりやすい傾向があって、気が付くと 「 ありゃりゃ 」 という結果になる。
肥満は、外見的な美醜の問題だけでなく、健康面で影響の大きな問題なので、特に中年以降は気をつけたほうが望ましい。
痩せ過ぎにも問題はあるが、太り過ぎると成人病になる心配が大きい。
最近になって、何か特別な運動でも始めたわけではないが、なるべく間食を摂らず、規則正しい食事の習慣を心がけたことが効を奏したようだ。
やや酒量の多い日もあったりするが、太りやすいビール類などは多く摂らないので、さほど肥満への影響は無かったようである。
外食時には、なるべく魚や野菜を中心としたメニューを選び、調理方法も、揚げ物が多く偏らないように気をつけた。
かなり忙しい日々を送っているが、多少遅くなっても、できるだけ自炊をするようにして、家では粗食を旨としている。
忙しいため、凝った料理をつくれなかったことが、かえって幸いしている。
いくら服装に気をつかっても、体型が崩れてしまうと、「 着こなし 」 が悪くなり、何を着ても格好良くは映らない。
テレビによく出ている男性デザイナーの一人が、たまに素人のファッション・チェックなどをしているが、彼自身の体型が悪いので説得力が薄い。
ファッションと体型には相互関係が深く、特に、若々しい着こなしを望むならば、中高年特有の肥満体型に陥らないよう、気をつける必要がある。
もちろん、服装が体型の弱点を補正することもあるが、本当にオシャレな人というのは、好きな服が着れるように、体型を維持することにも積極的だ。
衣服への興味だけではなく、その人のライフスタイル全般に関する考え方、取り組み方を含めた 「 すべて 」 が、その人のファッションなのである。
男性向けのファッションで一世を風靡した 「 VAN ( ヴァンジャケット ) 」 の創始者である 石津 謙介 氏 が、肺炎のため亡くなった。
昭和30年代から50年代初頭までの間は 「 アイビールック 」 の全盛時で、その火付け役となったのが、この 石津 氏 である。
ちょうど私が高校に通っていた頃 ( 昭和50〜53年 ) は、その終焉を迎える直前であり、まさに我々は 「 最後の VAN 世代 」 だった。
青春を振り返るときに、「 VAN の白の BD ( ボタンダウン ) シャツ 」 は、欠くことのできない必須アイテムであり、我らの誇りでもあった。
現在ほど 「 ブランド 」 が豊富に揃っていない時代なので、皆が集中したという背景もあったが、あれほどの巨大ブランドは二度と現れないだろう。
ここで 「 VAN 」 の思い出を語り始めると、日記が何行あっても足りないぐらいで、とにかく当時は 「 男性ファッションといえば VAN 」 であった。
それは、オシャレに興味のある学生にとって 「 制服に準ずるもの 」 という ポジション が成立しており、必需品ともいえるものだった。
衣料品店も、「 VAN を置いているか、否か 」 で存在価値が分かれ、取り扱い店にはたえず、各地の学生がたむろしている風景があった。
我々も、学校帰りに 「 VAN の ショップ 」 へ頻繁に立ち寄り、新作情報や、バーゲンの予定などを店員の兄さんから聞くのが一つの習慣だった。
情報誌の少なかった時代、彼らは 「 神 ( 石津 氏 ) の声を伝える使徒 ( 店員 ) 」 であり、我らにとっては憧れの存在だったのである。
最近の衣料品業界が不振である原因の一つに、「 ストア・ロイヤリティ 」、「 ストア・エクイティ 」 の低下という現象が考えられる。
昔は、商品そのもののブランド力だけではなく、それを扱う店舗の価値というものがあって、店員の商品知識、接客力などが大いに影響した。
いまは、情報誌が溢れ、消費者の知識量が豊富になる一方で、対面販売の形式が減り、知識を求められなくなった店員の技量は格段に低下した。
セルフ販売 ( 気に入った商品を選び、レジに持っていって清算する ) 方式の店舗では、あまりファッションに縁の無い人間でも店員が務まる。
客が 「 玄人化 」 して、店が 「 素人化 」 した結果、店舗自体の存在価値は 「 ただの商品の流通拠点 」 でしか成立しなくなってきたのである。
それを復活させるには、店員のスキルと人間的な魅力を高め、店舗自体の活性化と、位置付けを高める努力をする必要がある。
消費者が、「 あの商品を買った 」 だけでなく、「 あの店で買った 」 と言って自慢するような店づくりを目指すことが、本来は店舗の使命なのだ。
石津 氏 は、休日には料理もして 「 ライフスタイル全般がファッション 」 という名言を遺した粋人だが、経営の手腕については批判も多かった。
販売網の急速な拡大などが災いして破綻も経験されたが、彼の構築した 「 VAN 」 と、その店舗の持っていた魅力は、見直されるべきである。
あんな時代は二度と来ないだろうが、商品力にあぐらをかいて店舗の価値を高めようとしないようでは、繊維不況からの脱却は難しいだろう。
|