「 天才の極意は、子供の精神を老年まで持ち越すこと、
すなわち、決して情熱を失わないことである 」
オールダス・レナード・ハクスリー ( イギリスの小説家、エッセイスト )
The secret of genius is to carry the spirit of the child into old age, which means never losing your enthusiasm.
ALDOUS LEONARD HUXLEY
卒業シーズンを迎え、いろいろな人に 「 転機 」 が訪れる。
それが、この時期の特徴であり、いわゆる風物詩みたいなものである。
ところが最近は、「 卒業しても何も変わらない 」 人たちも多い。
知り合いに、大学を卒業する男子、専門学校を卒業する男子がいて、二人とも 「 卒業しても、現在のバイトを続ける 」 という予定になっている。
もちろん、バイトというのも一つの就労形態だし、働くことに変わりはない。
それに、「 何もしない 」 というのも一つの決断であり、選択肢だと言えなくはないわけで、そこに 「 善悪の概念 」 を持ち込むわけにはいかない。
ただ、「 本当に、それでいいのか? 」 という疑問は残る。
フリーターという生き方は、現代の若者像として捉えられがちだが、本来、若者とはそういうものだろうか。
彼らに 「 どうして正社員にならないのか 」 と尋ねても、面倒だとか、やる気が起こらないとか、ろくな仕事に就けないといった声が返ってくる。
何かが始まる前に諦めてしまっているかの如く、将来に対する夢や憧れもなければ、情熱、好奇心、向上心といったものも感じられない。
世の中に対する 「 絶望 」 とか、「 倦怠 」 といった類のものは、ある程度、社会人としての生活を歩んだ後に、立ちはだかる壁ではないのか。
最初から、「 特にやりたいことがない 」 とか、「 新境地に興味がわかない 」 という姿勢に、はたして 「 若者らしさ 」 があるのだろうか。
彼らのような若者が多い背景には、社会の問題もある。
多くの企業が省力化を推し進めた結果、雇用負担の少ない派遣社員や、パート、バイトの比重が極端に増え、正社員に対する雇用枠が激減した。
しかし、それでも、新卒者に対する求人が 「 0 」 になったわけではないし、一部の企業は優秀な人材、将来性のある人材を求めて奔走している。
すべてを社会や環境のせいにするのは、少し間違っているだろう。
それに、彼ら自身は 「 そんなつもり 」 もなく、誰を責めるでもなしに、ただ、「 情熱をもって取り組みたい事柄がない 」 のである。
そんな生き方を、けして推奨したくもないが、否定することはできない。
各人の価値観は画一化されず、多様な生活様式と、何にも縛られない自由な思想が認められていて、それに偏見を向けることは許されない。
しかし、周囲の評価や世間体はともかく、自分自身がそれでいいのか。
もちろん、大手の企業に就職できたからといって、それだけで将来が安泰というわけでもないが、「 その日暮らし 」 の生活では安定感が生まれない。
結婚して子供をつくる気にもならないだろうし、年金に加入する割合も低く、国家的にみても、あまりよい傾向とはいえない。
いくら世の中がおかしくても、未来に期待できなくても、いまは情熱が湧いてこなくても、できれば 「 新しい社会に飛び込み、冒険する 」 気概が欲しい。
彼ら自身、たとえば小学生の頃に 「 将来は、何になりたいか 」 と訊かれ、「 フリーター 」 と答えたわけではあるまい。
そう考えると、一番 「 子供らしさ 」 を失くしてしまったのは、中年の我々ではなく、むしろ彼らのような若者ではないだろうか。
彼らの親にも問題はあり、いつまでも 「 基礎的生活条件 」 を提供し続けることで、親に依存する 「 パラサイト・シングル 」 が生まれる。
せめて一年前に相談してくれたらとは思うが、どちらの親御さんもお金持ちなので、今のところは 「 体裁が悪い 」 程度しか意識がないらしい。
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