「 人間の最大の誘惑は、あまりにも小さなことに満足してしまうことだ 」
トーマス・マートン ( カトリック修道僧 )
The biggest human temptation is _ to settle for too little.
THOMAS MERTON
仕事柄、様々な企業の、いろいろなビジネスマンと接する機会が多い。
個々に適切な改善策を模索し、ときに助言をし、成功に導こうとしている。
カウンセリングの基本は 「 聴くこと 」 だが、コンサルティングにおいては、聴くだけでは不十分で、問題解決まで導かなければならない。
共通しているのは、「 自発的な行動を促す 」 というところで、一方的に指示してもよい同じ企業の上司、部下といった関係とは、そこが少し異なる。
たまに、コンサルタントを 「 助っ人的管理職 」 のように誤解している人が、企業側にも、コンサルタント側にもいるが、それは間違いだと思う。
大抵のコンサルタントは、そこそこの企業で管理職を経験した人物なので、たしかにそのほうが手っ取り早いし、簡単に事が済む場合も多い。
しかし、「 自分で解決させる 」 方向へ導かないと、目先の問題は解決しても、将来的な課題を克服する力を、各人に養わせる手助けにはならない。
つまり、カウンセラーもコンサルタントも、「 正解を教えるのではなく、各人に発見させる 」 ことが本来の役割であり、その姿勢を崩すべきではない。
人間は誰でも、自分の手柄や実績をアピールしたい欲求を持っているし、貢献度を数字で示さないと、なかなか人は認めてくれないものだ。
それも事実だが、その欲求を抑えて、企業や個人に奉仕する気持ちがないと、信頼に足るカウンセラー、コンサルタントにはなれない。
正直に言って、ある企業の成果に関与したとき、「 ねっ、ねっ、私が言った通りにやったら成功したでしょ、ねっ、ねっ! 」 と言いたいときもある。
そんな気持ちをグッと抑えて、「 皆さんが、ご自分で達成したのですよ 」 と穏やかな笑顔を残して去っていくのが、正しい身の処し方なのだ。
ただ、「 野心がまったく無い 」 というのも、どうかとは思う。
カウンセラー、コンサルタントには 「 高齢者 」 が多く、とっくの昔に野心など消え失せ、名誉職的な立場で臨んでいる人もいる。
他人に奉仕して対価を得る作業は、あくまでも 「 一つのビジネス形態 」 であり、けして 「 ボランティア 」 ではない。
お金をいただくことでの 「 責任 」 や 「 義務 」 がそこには存在し、具体的な成果を保証し、積極的に取り組むことの原動力にもなっている。
まだ 「 年寄り 」 とは言えぬ年齢で、「 さすが先生 」 とおだてられ、ちょっとした名誉で満足してしまう誘惑とも、立ち向かわなければならないのだ。
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