Tonight 今夜の気分
去るものは追わず、来るものは少し選んで …

2005年03月09日(水) 夢を追う若者



「 世界で最高の教育は、名人が仕事をしているところを見ることだ 」

                          マイケル・ジャクソン ( 歌手 )

The greatest education in the world is watching the masters at work.

                            MICHAEL JACKSON



優れた師との出会いが、著しい成長のきっかけになることは多い。

逆に、ヘンな師に出会うと、ちょっと 「 ややこしい 」 ことにもなる。


夕方、次のアポイントまで時間が空いたので、一人で喫茶店に入った。

隣のテーブルでは、30歳位の男性が20代前半とおぼしき二人の男性に、なにやら熱弁をふるっている最中だった。

声が大きいので、かなり細かい内容まで聞こえてくる。

どうやら彼は、ちょっと怪しげな 「 マルチ商法 」 ぽいビジネスへ参加するように、若者たちを勧誘しているようである。

若者たちは 「 乗り気 」 のようで、かなり熱心に傾聴している。


話し手は、しきりに 「 夢 」 という言葉を多用し、私と共に店内にいた15分の間に、おそらく 「 20回 」 は連発していたように思う。

あとは、「 周囲の意見を気にするな 」、「 非常識でいこう 」 という台詞が、何度となく繰り返され、かなり印象深かった。

彼いわく、「 非常識な成果を求めるには、非常識な感覚が不可欠 」 だそうで、「 俺なんてさ、非常識街道まっしぐらだよ 」 と付け加えていた。

帰る間際、「 この店、暖房が利きすぎてるよな。少しは考えればいいのに 」 と、伝票を片手に席を立った。

ずいぶん 「 常識的なことを求める 」 じゃないかと、突っ込みたくなった。


彼が去った後、二人の若者はその場に残っていた。

二人は 「 すごいよな 」、「 頑張らなきゃな 」 と、決意を固めた様子で、文字通り 「 目からウロコが落ちた 」 ような顔つきである。

大学を出てサラリーマンになったが、つまらないし、一攫千金の魅力に誘われて、参加することに決めたらしい。

彼らもまた、「 夢が大事なんだよ 」、「 夢のためだ 」 などと、憑かれたように 「 夢 」 という単語を繰り返し、繰り返し、何度も口に出している。

彼らの 「 夢 」 とは、一体なんなんだろうか。


先日は、別の若者から興味深い話を聞いた。

彼は24歳で、大学を出てから企業に就職したが、辞めたいのだという。

辞めてどうするのかと尋ねると、私と同じように 「 経営コンサルタント 」 になりたいのだと言う。

同業者の参入を阻止する気はないが、圧倒的に経験不足だし、その若さで 「 なにも、そんな “ ジジ臭い仕事 ” を選ばなくても 」 と、遺留しておいた。

けして 「 無理 」 とは言わないが、いくら学業が優秀だったからといえども、実務経験が無ければわからないことも多いし、企業からの信頼も得難い。


彼も、それは 「 夢 」 のためだという。

企業に属していたのでは、自分が本当にやりたいことができず、あまり興味の無い仕事にも従事しなければならない。

そのすべてを無駄とは言わないが、時間がもったい気がするらしい。

いまならば、失敗しても親の経済力に頼ることができ、生活の不安はないし、成功すれば、勤め人では考えられないような報酬にありつける。

それが、彼のいう 「 夢 」 なのだそうだ。


幸せになる方法は人それぞれで、どれが正しいとはいえない。

ただ、「 幸せになることを急ぎすぎる 」 と、失敗することが多い。

それに、彼らが 「 夢 」 という単語に託した 「 成功し、お金持ちになる 」 という目標、そんな結果だけが、はたして重要なのだろうか。

山登りをする楽しさが、もしも 「 頂上に立つ 」 という行為だけならば、誰も険しい山道を登らず、ケーブルカーやヘリコプターを利用するはずだ。

そうやって簡単に入手した 「 成果 」 に、達成感、満足感はあるだろうか。


実力主義社会の中において、「 結果 」 は 「 プロセス 」 より優先される。

それは事実だが、プロセスを省いて偶発的に結果だけを手にしたところで、次の成功への道順は、誰に教わればよいのだろう。

棚ボタ式に得た成果も、たしかに 「 結果 」 ではあるけど、その人の仕事の 「 実績 」 としては、キャリア面の評価をしにくいものがある。

けして、「 若いうちは冒険するな 」 だとか、「 修行中の分際で 」 とは言わないけれど、地道にキャリアを積む作業を避けては、成長が期待できない。

ライブドアの社長のように、若くして華々しい活躍をする人もいるが、彼らの立場は 「 投資家 」 であって、一般的な 「 ビジネスマン 」 ではない。


将来の 「 夢 」 を追いかけて、冒険することも間違いではない。

しかし、その理由が 「 下積みが嫌だから 」 とか、人に使われるのが面倒だからというのでは、成功する見込みも薄いし、応援する気になれない。

いつも楽なことばかり選んでいても、いつか困難に直面するだろう。

逆に、困難に挑戦し続けることが、幸せを呼び込む手段となり、結果的には成功へ通じる近道になるような気がする。

それに、嫌な仕事でも、やっているうちに熟練し、面白さを見出し、経済的な豊かさだけでなく、心と魂を豊かにしてくれるものではないかと私は思う。






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