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■ 朝の体温
ケガうんぬんはさて置いても、冬はとにかく眠い。 朝方、まだ温かさの中に沈んでいたい気持ちを必死に抑えて、体を起こす。冬休みでもケガ人でも、いつまでもだらだら寝ていると体も心も鈍ってしまう。来るべき決戦が延期されたからと言って、ここで気を抜いてはいけない。 そう、いけないのだ。 「……あと5分」 授業がないことを軽く恨んだのは初めてだ。無理矢理起きるには、やはり理由があった方がいい。でないと人間、どうしてもだらける。ここのところ、紗枝が頻繁に部屋に来ては世話を焼いてくれるので、少し気持ちが弱くなっていた。 再び頭まで潜って、一気に跳ねあがるような勢いでベッドから出よう。決意して布団に潜ると、何か糸のようなものが手に触れた。 「あ?」 こんなところに本来あるべきでない、細めの、揖保の糸的な何かがある。布団の中に。始めは布団の繊維でも抜けたかと思った。が、それにしては長くてたくさんあるのだ。妖怪が潜っている。咄嗟に掴んで引っ張ったそれは予想以上に長く、予想通りの色をしていた。 緑だ。艶やかな深緑。ぐっと握って力をこめて引っ張ると、本体の方から抗議の声が上がった。 「いたーい」 「紗枝……そこで何してる?」 中に潜んでいた変質者は悪びれるでもなく、もそもそと顔だけ出す。 「玲を起こしにきたのよ、当初の予定では」 「ほー。で、どうして予定は変更になったんだ?」 「そうねぇ。寒いから?」 「そんだけの理由で人の布団に入ってくんじゃねぇ!」 出ろ出ろ、と追い立てても一向に紗枝は起きる気配がない。本格的に休止モードに入ってたせいか、スイッチが入るまで時間がかかる。小さくあくびをすると、紗枝はまた電源をオフにすることに決めたようだ。まぶたがゆっくりと閉じて、玲の方に身を寄せた。 「ったく……」 温かさの元は自身の体温だけでなく、紗枝のせいでもある。そう思うと、少しは感謝した方がいいのかも知れない。寝ているのをいいことに、髪を撫でる。起きていたら色々言われて、とても大人しく撫でさせてはくれないだろうから。 それに、恥ずかしいし。 「ケガ人と一緒に寝たがるヤツがいるかよ」 文句の一つも言いたくなるが、紗枝は眠り続ける。
翌日。部屋に来た紅愛に緑の髪がベッドに落ちていることを指摘されて、死ぬほど焦った。紅愛もそうだが、紗枝も髪を落とすとたちどころに居場所が知れてしまう。 今後は、紗枝が寝て帰った日は念入りにチェックしよう。
2007年11月17日(土)
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