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■ 特別お誕生日企画「綾那争奪戦」
特別なのに争奪戦。誕生日なのに争奪戦。素敵な乙女どもに取り合いされるメガネの乙女。そんな一日が幕を開けた。
ケース1「クロさんの場合」
はやてはドンとテーブルを叩き、小さい体を精一杯伸ばして主張した。 「だから、あたしが一番!」 内容は実に明快。綾那とのカップリングで、誰が一番優勢かという議題だ。まだ朝方のカフェテラスでそんなことを大声で言うのはどうかと思うが、なぜか今日ははやて達以外の生徒の姿が見えない。 「誕生日だからね」 誰に問われるともなく、はやてが言った。そう。星奪りの特別ルールとして、「お誕生日ポイント」というものがある。この前までそんなルールは誰も聞いたことがなかったから、例の会長の気まぐれに違いない。それも、8月の頭に突如設定されたらしい。それを聞いた一部の事情を知る者は、会長の刃友の顔を思い浮かべずにはいられなかったそうだ。 そのとばっちりというか、恩恵というか、9月に生まれた綾那にもルールは適用される。 「朝早くから人を呼び出しといて、そんな話なのか、え?」 「いだだだだ、いだいです、あやなさん」 はやての頬がつきたての餅並の柔軟性を発揮している。 「私はてっきり誕生日ルールの作戦でも立てるのかと思った」 「あー」 はやてはちょっとだけ遠い目になる。急に空いた変な間に、綾那は速攻でピンときた。 「あんた、ルールわかってないだろ」 「えへ」 かわい子ぶってみるはやて。と、拳を急速に固めてはやてに迫る綾那。人のいないカフェテラスでよかった、と思わせる程の鬼ごっこが展開した。開店前の、折り畳まれたパラソルの幹に綾那の拳が炸裂する。メキッといやな音を立ててパラソルは倒れた。アルミでできているはずなのに。 「あやっ、なっ、でも、あたしが一番だって、今日はしょうめいしなくちゃいけなくって!」 鬼っ速で繰り出される拳を、風のようにかわしながら息の合間にはやては叫んだ。少しずつ涼しくなってきた秋の空気の中に、その言葉は響く。 「意味がわからんっ!」 綾那の右腕が大きく空を切った。バランスが崩れ、咄嗟にテーブルに手をつく。 瞬間、ダダッと強い踏み切り音が聞こえ、視界がピンク頭でいっぱいになった。ガツッというとても硬いものにぶち当たった音がした。 「あ、あやなぁぁぁ!」 空を塞ぐものは何ひとつなくて、雲ひとつない青い空。 最後に聞いたのは、刃友の心底泣き出しそうな声。それと、しばらく味わっていなかった、鉄の味。
2005年09月13日(火)
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