池ポエム
ハンス



 魔女たちの生活

 春が来て夏が来て、秋が来る頃に両親に言われてここにやって来た。でも、彼女はその何倍もの季節を一人で、たまには誰かと、越えてきたんだろう。だから今更弟子が一人、同居を願い出たって何とも思わなかったはずだ。一日目は口をきかなかった。二日目は単語をしゃべった。三日目に話しかけたら、相槌が帰ってきた。四日目からは覚えていない。長い年月を越えすぎると一回一回の会話なんかどうだってよくなる、のかも知れない。今ジェニーと話してる12歳の少女の中身は112歳のおばあさんなのだから。
 理由をそれとなく聞いてみるのには苦労したな。魔法使いなんだから何だってある。永遠の命を得る方法、一度死んでまた生き返る方法、死と生の境に生きるものになる方法・・・これは全部彼女の家の書棚から勝手に持ち出した本で知った知識。両親も魔法使いだったけど、こんなあやしげな本はなかった。どうも、師匠の体は死なないというタイプの不死らしいということはわかった。椅子に座って居眠りしてるとこなんかを観察したからね。少女のような容姿は何かの力で保たれている様子はなくて、まったくの自然だ。眠っている時も食べている時も変化はない。お前はいちいち笑ったり怒ったりうるさい、ってよく言われる。僕くらいの年の子供は普通そうだろう。師匠の顔は子供なのに、そういう表情の変化が乏しくて、人形みたいにつるりとしている。
 「クリス、そろそろ行くぞ」
 「え?」
 「明日また来るってさ、この子供ばあさん」
 師匠はジェニーさんを睨むとさっさと扉から出て行ってしまった。
 「明日、誕生日パーティーをやるから、今日は帰るんだって」
 ジェニーさんは師匠には一回死んでもできない笑顔で言った。
 「あんたも是非来るのよ、クリス」
 「もちろん」
 次の日、112歳を祝いたい人達が町外れの酒場に集まった。

2003年01月04日(土)
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