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■ 魔女たちの生活
長い付き合いの友達のことを○○年来の友、なんて呼んだりする。まぁそうやって言えるのは長く生きてる人だけで、大抵僕みたいな十年と少ししか生きてないやつには言えないセリフだ。僕の師匠は、見かけこそ僕とそう違わないけど、この何年来ってのが言えてしまう。今カウンターにいる女の人と師匠は、ちょうど向かい合ってそんな話をしている。僕は少し離れたテーブルでジュースを出してもらったところだ。 「で、あんたいくつになるっけ?」 「毎年祝ってるくせに忘れるな」 「毎年忘れては思い出して祝ってんじゃない。あんたこそ、自分の年忘れてんじゃないの」 師匠の誕生日が近くなるといつもする、この会話。僕が師匠のとこに来てから聞かなかった日はない。多分、僕が来るずっと前から、僕が生まれる前から、この二人は同じ会話をしてきたんだと思う。カウンターの女性、ここのマスターをやってるジェニーは師匠とは長い付き合いらしい。本人がそう言っている。師匠はジェニーのことをあまり話さない。年だってだいぶ離れてるし、師匠とジェニーはまったく違う感じの人だから、どうやって知り合ったのか興味があるってものだ。でも、言わない。ジェニーは笑いながら僕に教えてくれた。この人に命を救われたんだよって。でも詳しいことは秘密だと言っていた。 「よぅ、今日もお供かい、クリス」 僕の前に現れた体の大きいコック。ジェニーの下でずっと働いている彼は、別にジェニーの旦那さんではない。 「こんにちは」 「あの二人は話し出すと止まらねぇ。どうせ、今日も泊まりだよ」 ボブは自慢の分厚い唇を突き出して二人の方を指した。 「しっかしなぁ、何回目の誕生日なんだ?そろそろ祝い飽きてもいいだろうに」 ボブが言うのももっともだ。僕の師匠の誕生日は、これで通算112回目。なんと、満112歳。さば読みでもうそでもなんでもない。純然たる112歳だ。僕とはちょうど100歳差になる。彼女の見かけは12歳ぐらいだから、見かけと中身の差が100歳でもあるわけだ。 「ちょっとボブ。誕生日ケーキは頼むわよ」 「わぁってるよ。とびきりでかいロウソク立ててやらぁ」 奇妙な子供、奇妙な老人。僕の師匠は、呪われている。
2002年12月11日(水)
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