どんぐり1号のときどき日記
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いわさきさんと電話。実は昨日来ていたのに気づかなかったのである。
その後、「サマーウォーズ」を見る。これは確かにとても楽しい映画で、間違いなく人にも勧められる作品だ。
ただこの監督には、長尺の作品は合わないのではないだろうか。「時をかける少女」では繰り返しの演出が必要なためになんとかなったが、もう少しコンパクトな方が合っている人のように感じる。 それと声優は選ぶべきで、特に夏希の泣くシーンは興ざめである。どうしてもこの人を使わなければならないしがらみがあるなら、演出を変えるべきだった。
そして脚本レヴェルでも不満がある。 ここから先はストーリーに関係するので、未読の人でネタバレが嫌いだという人は読まない事。私は基本的に映画の解説に必要ならネタバレするべきだというタイプの人間なので、読むのも書くのも好きなのだ。
ラストのはやぶさ、もといおおわしのシークエンスは、ここまできたら失敗は惨劇となるために、回避は必然である。従ってそれまでの話の展開から、嫌でも結末が見えてしまうのだ。つまりラストへ向けて盛り上がっているはずなのに、どうも感動できないのである(現実のはやぶさを見てしまったし、それ以前に攻殻機動隊S.A.C.2nd GIGというテキストがある)。 むしろ私は、「74から75への変化」のシーンでじわっときた。ここで「僕のアカウントを使って」は反則だろう。誰でも感動するに決まっているではないか。本来ならあそこからラストへ一気に向かう脚本と演出があれば感動もひとしおなのだが、どうしても展開が緩いのだ。こういう所で、この監督は短めの作品の方が合っているのではないかと思ってしまうのである。
あとテーマとして「コミュニケーションが大事だ」というが、彼らがこの戦いに勝てたのは、コネと金と偶然である。 そもそも大学の研究用スーパー・コンピューターと自衛隊の利用する通信機材、そして発電用の漁船などを自宅にセットするなんて、普通はあり得ないのだが、実際これだけの設備がないとあんな戦いは不可能だ。つまり普通の人間には元々勝ち目はなかったのである。
それとこれが最大の弱点だが、あれだけの人数を出してしまっておきながら、群像劇としてあまりうまく機能していない。だからどのキャラクターも中途半端になってしまい、特に主人公であるはずの夏希と健二の立ち位置までもが中途半端なまま終わってしまっている。バットマンの「ダークナイト」が素晴らしいのは、群像劇としても良く出来ているからで、そういう部分も参考にして欲しいものだ。
良い点も悪い点も色々書きたいが、長くなるからやめよう。色々と問題点は多いが、とにかく楽しめる作品になっているのは間違いなく、お勧めの作品である。
最後に。 いつも思うが、映画のラストに歌は不要だ。感動の邪魔になるだけなのである。基本的にエンディングの歌というのは、多分スタッフがラストを締めくくるに相応しいと思って選ぶのだろうとは思うが、観客がその曲を映画に相応しいと感じるかどうかは、未知数である。例えば「イノセンス」の時は、あの感動がライトの曲でそがれてしまった。鈴木プロデューサーの提案かつ強制だったらしいが、明らかに作品の世界観から浮いているし、そもそも余計である。せっかく川井健次が音楽での世界観統一を図っているのに、それをぶち壊しているのだ。 この「サマーウォーズ」でも同じで、夏だからという理由で曲をイメージする人だけとは限らないし、音楽が好きな人ほど四季とのイメージのリンクはないのである。ここは歌物を持ってくるべきではないし、特に良く出来た映画では、絶対に避けるべきだ。
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