どんぐり1号のときどき日記
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結局、ヴェネチアで「スカイ・クロラ」は賞とは無縁になってしまった。 まあ仕方がないといえば仕方がない。この映画はジワジワ来る類の映画なので、賞取りレースではかなり不利なのである。ストレートに感動する方が有利なのは当然だし、そういう映画の方がヒットしやすいのだ。 でもなんとか賞を取らせたかった。今回の映画はそれだけの価値がある映画なのだ。間違ってもらっては困るが、映像ではない。映画である。
今回は押井作品としては珍しく、あまり絵を動かさずに演技をさせると言う試みをしているのだが、この部分ではかなり成功していると思う。本当に演技をしているように感じる部分が結構あるのだ。 だが普通の人はどうしても戦闘シーンに目が行ってしまう。だから歯を磨きながらシャツの裾が揺れている事になど誰も気がつかないし、草薙の表情の変化、三ツ矢の草薙に対する心情の変化など、感じるはずもないのだ。 これこそが日本のアニメの底力なのだが、誰もそこに気づかない。良い映画なのに、本当に残念だ。
今回の押井作品でその凄さに映画関係者やマスコミが気づかないのでは、日本のアニメーションが映画に昇華するのは難しくなるだろう。というか、若手のアニメーターが育っていない現状を考えると、アニメーションで映画を作るのは不可能になるかも知れない。 世間が宮崎や大友しか求めないのであれば、それは間違いのない未来だ。
それから今回感じたのは、押井監督は「映画ファンを相手にしている」という事だ。昔のヨーロッパの映画を好きになれるような、そういう人たちを相手にして、映画に対して不勉強であるような輩はあまり相手にしていないのである。 以前の押井作品はどちらかと言えば独善的なので、判る人が判れば良いという感じだった。だが今回は映画を理解する人を対象にするという、極めてストレートな作品を作ったのである。これは大きな変化だろう。 いよいよ押井監督は、映画作家へと邁進している。これに関して宮崎は完全に遅れている。というか、宮崎にはもはや到達不可能なエリアだ。
これからの10年で日本のアニメーションは正念場を迎える。若手が育っていない中、ベテランが徐々に引退して行くからだ。こればかりは本人のやる気とは関係ない。年には勝てないという奴だ。だから10年後に押井監督が作りたいアニメーションを作れるだけの環境は、少なくとも現在のアニメーション製作という形では残っていないだろう。だから彼はそれを見越して技術を磨いているのだし、そういう環境整備している。 実は映画界の未来を本当に考えている大物というのは、押井監督しかいないのである。
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