どんぐり1号のときどき日記
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2007年06月25日(月) プリーストの魔法

ルー・クリスティの「魔法」とは、全然関係はない

 夜中にようやくプリーストの「魔法」読了。500ページ強という、読むのに物理的時間がかかる作品であった。
 とにかく不思議な感覚の小説だ。あまりに不思議に感じがするので、なんと言うかジャンル分けが微妙である。それもあって一つのトリックはほぼ途中で判るのだが、どうも第6部9章を読んでもスーザンの正体が良く判らなくなる。描写のとおりの人間なのか、違うのか…。
 もしかして私も読解力が著しく落ちているのかもしれない。

 ただ、プリーストは「奇術師」と「魔法」を続けて読んではいけないようだ。どちらも作者のリードが似ているため、方向性が見えてくるのである。もっとも見えてきたところで混乱し騙されるのは一緒だし、面白さが減じる訳ではないのだが、この2作は間を置いて読んだ方が良さそうである。
 しかし両方で1,100ページを越える2作を続けて読んだにもかかわらず意外と苦にならなかったのは、やはり文章が上手いからだろう。なんというか、洗練されたディックとでも言う感じだ。もしディックにこの位の文章構成力があれば、生きているうちにベストセラー作家になれたのではないだろうか。
 そもそもこういう話を普通の作家が描いたら、多分退屈になるだけで、それを最後まで引っ張る構成力はたいしたものである。これだけ緻密に考えられていれば、どうしても寡作になってしまうだろう。

 なお個人的には「奇術師」の方が好きだ。なぜならストーリーが複雑なので一般のミステリーのように読めるからである。「魔法」はストーリーが非常に単純でありながら、謎が多いという不思議な作品で、そのためどこで騙されていったのか、良く判らなくなる。これは意外とくやしいものがあるのだ。
 話が単純という事は、作者の狙いがなかなか見えてこないという欠点も持つのだが、少なくともこの作品に関しては、見えてこないのに退屈はしないのである。

 やはり不思議な小説だ。


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