十夜一夜...Marizo

 

 

朝ドラ受け(おかえりモネ) - 2021年10月07日(木)

2018年10月いっぱいで長年勤めていた仕事を辞めた。
それから毎朝、某国営テレビの朝ドラを
時計代わりに見るようになった。

2011年東日本大震災が根底に流れる
今回の朝ドラのワンシーンに、昔の記憶が蘇る。


若くてきれいなお天気キャスターが
自身の言葉に説得力がないのは辛い経験をしていないからだと
自分の幸せ(苦労知らず)な人生を振り返る。
隣には同じ年代で実家が震災を経験したモネ(主人公)を横目に
「辛い経験をしたことがある人の言葉には説得力がある」と
言外にうらやむ言葉を発した時に、その場にいた大家さんの女性に
「辛い経験なんかしなくていい。そんなものはしなくていい。」と
窘められるシーンだ。


唐突に15,6年以上前に言われた言葉を思い出した。

「Marizoちゃんは不幸を知らないから小説は書けそうもないね」

当時、カルチャーセンターの文章教室に通っていた縁で
とある作家先生が開催する文章サロンに入会した。
趣味の範囲で文章を習いたい人から、本格的に作家を目指す人など
老若男女15人前後のメンバーとゲストとして
参加していただいた作家さんや出版社社長、
大学の先生たちで新年会をしていた時に
隣に座った高齢の作家さんに笑顔で言われた一言だった。

「そうか、不幸でなければ小説は書けないのか・・・」

当時、周りにはその言葉を窘めてくれる大家さんの女性はおらず
どちらかと言うと「そうだ、そうだ」と賛同する人が多かった。

不幸とか辛い経験がどういうものなのかは
その人の感受性によって様々であろうが
世間一般的に言われる「不幸」はなんとなくイメージが出来るし
確かに私の人生は不幸とは縁のない人生だったと
当時、自負していたし今もってそうだと言える。


「そうか、不幸でなければ小説は書けないのか・・・」

その瞬間、当時の私は思った。

「じゃぁ、一生小説は書けなくてもいいや」


テレビの中の大家さんの女性は
形を変えて私の中に居た。

そんな事をふと思い出した2021年秋。
Marizo



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