「隙 間」

2012年07月23日(月) 「桐島、部活やめるってよ」

朝井リョウ著「桐島、部活やめるってよ」

著者が早稲田大学在学中に小説すばる新人賞を受賞した作品。

田舎の高校が舞台。
バレー部のキャプテンである桐島が突然バレー部をやめてしまった。
そのことが、ささやかな関わりしかなかったはずの五人の日常に変化を与えて行く。

バレー部の桐島の控えだったものや、恋人が桐島の同級生で評判だけは知っていたり、大して影響がなさそうな同級生たちの心に小さな波紋を起こす。

五人の物語で構成され、桐島自身はその中に入っていない。
なぜバレー部をやめたのか、やめてどうしているのかなど一切触れない。

「桐島」という投げられた小石ではなく、「部活やめるってよ」という噂が起こす波紋こそが、同年代の若者、高校生にとって重要なのである。



とはいえ。

いまいち目新しさや感動といったものにぶっつからなかったのである。

ただ、

「輝いている」

と描かれている学生時代(高校)は、たしかに輝いているひとときである。

輝いてなどいなかった、というものは、思い込みである。
光の強弱の差はあれど、自覚できていなくとも、過去は、とりわけ青春と代名される時期のものは、光を放っているものである。

たとえば漆黒の闇のなかだとしても、そこに自身という生命の輝きがある。

子の社会だけではおさまらず、親の社会にも同じようなものがあり、顔も声も温度もない世界が我が物顔で闊歩していたりする。

生きろ。

とは言わない。

だから、

探せ。


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