夢見る汗牛充棟
DiaryINDEXpastwill


2005年12月25日(日) アイルランド地誌 ギラルドゥス・カンブレンシス

青土社 有光秀行訳 2600円(税抜)

読了。
けっこう面白い。ちょっと欲しい。
もっと注釈を詳しく入れてくれたり、解説を詳細に
入れてもらえると、普通の本好きさんにはありがたかったかも。
厚さ、倍になってもいいからさ。

書いた人は、カドフェルのちょっとあと辺りの人ですね。
ええと、2005年11月6日のカドフェルのところ
で取り上げている『中世ウェールズを行く』のテーマ
になっていたウェールズのジェラルドさん、その人です。

征服者側のアイルランドについての記述ということに
なるんでしょうか。
好奇心の赴くままに、いろいろ土着の話を収拾してみました…
って感じなのかな?面白いです。

聖職者のはずなんだけど、本のあっちゃこっちゃで
あらわれる自己顕示欲というのが微笑ましい。
ええと、聖職者ってそれで、いいんだろうか(?)
いいんだろうな。

よくわからないんですが、キリスト教の聖職者でも
文中でユピテルとかアポロとかマルスとかそういう神々を
引き合いにだすんですが、そういうのは、OKなんですね。
もっと心の狭い宗教だと思っていました。

この人が、【ケルズの書】をべた褒めしてました。
現物を見て、頁を繰って、感じたものが感じてみたい。
写真でみても、すっごいですもんね、あれ。


第38章 奇蹟のように描かれた本

キルデアでおこった奇蹟の中で、私が最高に奇蹟的だと思うのは、
処女ブリギッタの時代に天使の教え示すところに従って描かれたという
驚くべき書物である。これはヒエロニムスによる四福音書対照表をおさめ
ページ数と同じ位多くの、多彩な色でじつに見事に彩られた図版がある。
そこには天から霊感を得て描かれた神の顔を見ることができる。また六つ
あるいは四つ、あるいは二つの羽を持った福音書家の神秘的な像を。
また、ここにはワシを、そこには子ウシを、ここには人の、そこには
ライオンの顔を。そして、ほとんど無限の、この他の図像を。
それらをもし皮相的に、普通に、ぼおっと見るだけならば、紐状の模様
というより、拭ったような跡が見えるだけだろう。しかしもし、いっそう
鋭く観察しようとまなざしを向けるなら、そしてこの作品のはるか奥まで
視線で貫きその秘密へと迫るなら、どこも人間でなく天使が精励して描か
れたのだと断言するだろうほど微妙にして繊細な、細かく緊密な、もつれ
結び合った、そしてさらに鮮やかに彩色されたからまりに気づくことが
できるだろう。確かに何度も入念に見れば見るほど、私はますます驚嘆
すべき要素に気づき、いつも初めて見る者のように驚くのである。


本を読んでいると、自己顕示欲旺盛で、名声への欲望もすごそうな、
ちょっと苦手なタイプの人かなぁと思うような書きようが多いのですが、
ここだけは、素直で真摯で率直な驚きと敬意が伝わってくる感じです。
どんな人でも敬虔な気持ちにさせる芸術を人の手が作り出すのは
本当にすごいことだなぁ、と思います。


恵 |MAIL