しゃぼん暮らし
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夏のあいだは夕刻に走っていたな
陽射しを避けてすこし遠くの高架、トンネルのなかを何度も往復した すぐわきを騒がしく車が通り過ぎる
トンネルのなかは異国の歌のことばを憶えるのにいい
とてもゆっくり走る 汗があがってくるのも鈍い ごくまれに足が速くなると足のいいようにさせておく
はやく帰ってごはんの支度、
と思いつつ いつまでも止まらないときがある
音楽を聴きながら走るときはまず足元を点検しながら走る
しんでいる生き物がいたりするのだ
この夏いちばん印象的だったのは 羽をひろげてしんでいた黒い蛾、羽のぶぶんがとくにひろがって 今にも飛び立ちそうに、しかし動かない
ふと車の列が途切れる瞬間があるのだ
トンネルのなかの透んだオレンジ まだふやふやしただるい夕焼けが筒のふたつの口から見えてくる
休日の夕刻は
入り口の住宅のひとつの庭で ボールを弾かせて遊んでいるちいさい男の子に会う
そろそろ早朝に戻そうかな、と考える
ママコーラスのピアノ弾きで voca(バンド名)でわたしの伴奏をしてくれたヤマギシさんは 御夫婦でウルトラ・ランナーなのだか
(百キロ走りにゆくふたりって)
一度、郵便受けに音源を届けにいった早朝 団地のなかを走っているひとを見かけた
植え込みの緑に すっーっと消えるしろいシャツの切れ端を
あれはそうだったのかな
とても規則正しくかなり速いピッチだった
競争したら負けるな、と思った
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