風紋
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とある場所を訪れ、とある方とお会いしてきた。
なぜその場所を訪れたいと思ったのか、なぜその方とお会いしたいのか、自分でもよくわからないままに出向いた。自宅に帰ってきた今も、やっぱりよくわからない。ただ、私は行きたい・行かなければならない、会いたい・会わねばならないという強い思いだけを抱えて行った(それがきちんとした理由になるのかどうか今でもわからないのだが…)。
少し歩いた。今の私の身体の全部を使って、その場所の姿を感じようとしながら歩いた。今のことを、私の身体の全部を使って、ずっとずっと覚えておこうと思った。またここに来ることがあるかもしれない。来たい。でも、もう来ないかもしれないし、仮に未来のある時に来ることができたとしても、この場所は変わっているかもしれないし、私も変わってしまっているだろうから。
いいお天気だった。空は青く、雲はゆっくりと動いていて、風が少し強く吹いていた午後だった。
色々な方とお話した…が、あまり、いや全然うまく話せなかった。とても優しい空気の流れる場所だったのに。ごめんなさいごめんなさいと思っていた。言葉にならなかった。
「日記」という形でこの場所に今日のことを書こうとしても、今も全然言葉にならない。言葉にしないとわかってもらえないということは知っているのだけれど、どうしても無理で、言葉にならないのが悔しい。けれども、行って良かったと思っていることと、今日がいい1日であったことだけは確かだ。
帰りの電車の中で、不意に鼻の奥がつんとして、涙がこぼれそうになった。“どうして私は泣きそうになっているのだろう”と思いながら、涙がこぼれるのを必死でこらえていた。悲しかったのでも寂しかったのでもないけれど。
ありがとうございました。
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