Monologue

2004年04月29日(木) ハードカバーの下の欲望

(あれ ?)

ダイヤ柄のトランクの中をゴソゴソ探りながら、レオリオは首を傾げる。

先刻マーメンから受験生全員に配布された筈の
明日の『ハンター試験』の日時が明記された用紙が見当たらないのだ。

(おっかしいな?確かに、こん中入れた筈なのに……)

トランクの中身を洗い攫い全部外へ出してみたが、どうしても見付からない。

(ったく、しょうがねェな)

チッ!と舌打ちしながら立ち上がると、レオリオは自室を出て、
友人であるクラピカが宿泊している部屋に向かった。

あの几帳面な友人は間違っても用紙を失くしたりしない筈だから……


“コンコン”と部屋のドアをノックするが、返事は無い。

「あれ?いねェのかな?」

数回ノックを繰り返してみたが、やはり返事は返って来なかった。

(どこ行っちまったんだ?クラピカの奴……)

何気無くドアのノブに右手を掛けて力を込めると、
ノブは予想外に “クル…ッ”と抵抗無く掌の中で廻転した。

(え?開いてる?)

多少後ろめたい気持ちを抱きつつも、音を立てない様に気遣いながら、
そっとドアを開いて中に入ると、
レオリオは主不在のホテルの室内をキョロキョロ見廻した。

(ん?)

ふと、
ベッド脇のサイドテーブルの上に無造作に置かれた一冊のハードカバーの本に、
レオリオは瞳を留めた。

(アイツのかな ?)

そう云えば、最近多忙を理由に本処か、
せいぜい新聞位しか読んでいない事実にレオリオは気付く。

クラピカは、苛酷なハンター試験中であるにも関わらず、必ず何かしら本を読んでいる。
元々読書が好きなのだろう。

(どんな本読んでんだ?)

ちょっとした好気心にかられて、レオリオはテーブルの上の本を取り上げた。

まぁ、どうせ自分には判底理解出来っこなさそうな
『超』おカタイ純文学作品だろうと予測しつつ、栞が挟んであるぺージを開いてみる・・・と 、


“「あ・・・ッ!」
切ない叫びを上げながら、ビク・・・ンッ!と背骨を反らせる。

「ココも、好きなんだろ?先生」

細長く器用な指は、彼の身体の奥の秘部の最も敏感な膨みを探り充てると、
容赦無く責め立てた……”


(な、な、なんだコレ……?!)

慌てて本に掛けられた無地のカバーを外してタイトルを確認してみる……と、
最近TVや雑誌で話題になっている19歳の少女が書いたと云うベストセラー小説だった。

(確か・・・最年少で『ナントカ文学賞』を取ったとかってニュースで騒いでたっけな)

“過激で純粋な少年達の自由奔放な性”

……という、思わせぶりに付けられたアオリ文句を書店で見掛けた時は、
一瞬ドキッとさせられたが、
『ナントカ文学賞』を取る位だから、
てっきり・・国語の教科書みたいな内容かと思い込んでいた……


“力チャッ”

ドアが開く金属音に反射的に顔を上げると、

「勝手に他人の部屋で何をしている?」

この部屋の主であるクラピカが、澄んだ碧い瞳でジロリ…と鋭く睨み付けている。

「ああ、わ、悪ィ・・・」

昔、隠していたエロ本を母親に発見された時の様な後ろめたさを覚えながら、

(発見したのはレオリオの方なのに!)

「あ、明日の試験日程書いた紙無くしちまったんだ、悪ィけどコピーさせてくんねェ?」

しどろもどろ言い繕うレオリオの言葉に“フゥ・・・”と呆れた様に溜息を吐くと、

「……ちょっと待ってろ」

くるりと背中を向けて、愛用の赤い肩掛けカバンの蓋を開けてゴソゴソ探り始めた。

その隙にレオリオは彼に気付かれない様、そっ…とハ一ド・カバーの本をサイド・テーブルに戻す。


「これで良いのか?」

やがて、
クラピカは鞄から折り畳まれた一枚の紙片を取り出してレオリオにすっと差し出した。

「ああ、サンキュ!すぐにコピーして返すからよ」

紙片を受け取りつつ、
つぃ・・・・とサイド・テーブルの上の本に視線が向いてしまう……


「なぁ・・・・・その本、面白ェ?」

レオリオが問うと、
クラピカはキョトンと瞳を円くしながら細い首を少し傾げた。

だが、すぐに平然とした口調で彼は答える。

「ああ、まだ途中だが、筆者の文章力がかなり卓越しているからな、
物語の展開の仕方も画期的手法が取り込まれていて斬新だ」


「へえ・・・」

エロなのに?

そう言ってやったら、こいつはどんな顔をするだろう?


(見てみてェ……)

常に冷静に取り澄ました彼のポーカーフェイスの下に、
レオリオが抱えているのと同様にドロドロした欲望が存在しているのならば……


「なぁ、その本、読み終わったらどんな内容だったか教えてくれよ」

レオリオがそう言うと、事も無げにクラピカは答えた。

「ああ、無事に試験が終わったらな」


この試験が終わった時……

『ハード・カバー』の筆者が紙頁の上に綴った秘かな欲望を、

クラピカの透明な声はどんな風に読み聴かせてくれるのだろう?


それを想っただけで、

ゾク…ッと熱い欲望が下腹の奥底から沸き上がって来るのを感じる。


「……楽しみにしてるぜ」



2004年04月27日(火) 春色乙女

今朝、出勤した時に、ちょっと離れた処から歩いて来る『ボマーな貴婦人Hさん』に向かって、
「おはよう!」と言いながら手を振ったら、無視されてしまった。

何故?
私は彼女に何か悪い事をしてしまったのだろうか?

まだ起き抜けの為、かなりボケボケな脳細胞をフル稼動させて、
あれこれ考えを巡らせてみたが、どうしても『コレ』と云った理由が見付からない。

そうこうする内にHさんとの距離が次第に近付いて来て・・・

「あれ?な、ななかさん(仮名)?」

突然、Hさんが声を上げた。

Γ何で『ピンク』なんか着てるの?一瞬、判んなかったよ!」

そしてHさんは不思議そうに私の顔をまじまじ見付めながら、

Γだってななかさん(仮名)て、
普段は『赤』とか『黒』とか『黄色』とか『オレンジ』ばっかり着てるじゃない!」

そうなのだ、
自分は『ピンク』などの『パステル・カラー』が似合わない所為もあり、原色を着る事が多い。

だが、気候が春めいて来た所為か、
『赤』や『黒』と云う色を着て歩くのが暑苦しく感じられる様になり
(たとえ素材は薄くても、見た目はかなり暑苦しい(−−))
たまには『春』らしい服で通勤しよう!と思い立ち、
衝動買いした『ピンク』のカットソーを着てみたのだが・・・


「やっぱり似合わないかな?」と私が言うと、

「そんな事無いけど、ななかさん(仮名)って、ワイルドなイメージだからさ」

「見た目は『ワイルド』でも心は『乙女』なのに・・・」と言ったが一笑に拭されてしまった。


『乙女』らしい(?)春の朝の出来事。



2004年04月26日(月) やるならやらねば

“たった一つの生命を捨てて、生まれ変わった不滅の身体
鐵の悪魔を叩いて砕く
キャシャーンがやらねば 誰がやる”

そんな訳で映画 『CASSHERN』 の感想です。

例に拠って好き勝手語っております上、かなりネタバレもございますので、
まだ観ていない方はご注意下さい。

もう!とにかく映像がスゴイ綺麗!!

全体的にセピア掛かった独特の色使いが施された、
今まで観た事が無い、紀里谷ワールドとも呼ぶべき美しい映像と世界感に圧倒される。

戦闘シーンもスピード感が有って、迫力満点!!なのだが、
赫い瞳の巨大ロボットが街を闊歩するシーンは『ナウシカ』や『ラピュタ』を想起してしまった。
(まるで『火の7日間』の様だった(^^;))

画像だけでも観に来た甲斐は充分なのに、ストーリーも重厚で面白かった。
だが……本当に『重厚』
文字通り話が重過ぎる上に、全くと言って良い程、救いが無い。

『憎しみは憎しみしか生まない』と云う方程式はこんなにも救いが無いのか?と云う
主題が真剣に描かれていて、ラストシーンでは泣いてしまった。

個人的に惹かれたのは人間の身勝手で誕生させられたにも関わらず、
その存在を畏怖され虐殺される『新生人間』達……
『アンドロ軍団』の首領ブライキング・ボスを演じた唐沢寿明さん。

単なる悪役で無く、迫害される一族の長たる悲劇性を背負っている彼は、
物凄く格好良かった。

「我々が生きる事を認めなかった人間共を、今度は我々が皆殺しにする!」と云う台詞には
鳥肌が立ってしまった。

あと病気の妻を救おうとしている東博士役の寺尾聡さんと、
彼の研究を利用しようと企む軍の手下、内藤役の及川光博さんが良かった。

今観たい映画が沢山有るので行けるかどうか不安だが、
あの美しい映像を大スクリーンで、何とか、もう一度観たいと切望しているワタクシ。



2004年04月24日(土) 鍛えマッスル!

ついに念願のスポ−ツ・クラブに入会した(^^)v

今までは『プロテイン』を飲んだり、
自己流で筋卜レをやったりしていたのだが、
元々筋肉が付き難い体質だった為、辛く苦しい割には、ほとんど効果が無かった。

おまけに最近は年齢の所為でなけなしの筋肉もプヨプヨ弛んで来てしまったし、
体重も増え、体力もガタ落ち気味(涙)

やはり、いつまでも『自己流』ではイカン!と、
きちんとしたトレーナーの方がいらっしゃる処を探していたのだが、
ようやく良さそうな場所が見付かったので、思い切って入会した。
(格闘家志望の方やボディビルダー、何とお相撲さんまでいらっしゃるのだ(^^;))

“とにかく痩せたいです!”と訴えた私にトレーナーの方は、
「『絶対体重』が決まってらっしゃるんですか?」と尋いた。

「『絶対体重』って何ですか?」と私が問い返すと、

「必ずこの体重にしなければならない、と云う数字です。
『オーディション』や『試合』に出る方には有るんですが・・・・・・」

“特にそう云うのは無いです”と答えると、

「じゃ、ななかさん(仮名)の場合は
体重を落とすよりも、まず正しい筋肉を付けて行きましょう。

但し、もしかすると体重が増える場合も有りますが、あまり気にしないで下さい」

え?

『正しい筋肉』を付けるのは良い事だが、体重が増えるのはマズイのでは?

不審そうに首を傾げていると、

「引き締まったスタイルに見せるには、両肩にほんのちょっぴり・・・・・
肩パット程度の筋肉を付けてあげた方がウエストの細さが強調されるので、
ただウエストばかりを細くするよりも、ずっと効果的なんです」

その台詞を聞いて、
真っ先に『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラが柱にしがみついて、
コルセットをギュウギュウ紋め上げられる、あの拷問の様なシーンを想起した。

彼女の涙ぐましい努力は何だったのだ?

更にトレーナーの方は、私のプヨプヨした二の腕を掴みながら、

「ちょっと弛んでますねェ」

“グサリ!”と彼の言葉がナイフのやうに乙女(って誰?)の心に鋭く突き刺さる。

「これも付いてる脂防を取って、ただ細くすれば良いって訳じゃありません。

今のあなたの二の腕は中身が入っていない袋の様な状態なんです。
だから、この袋の中いっぱいに良い筋肉を作って入れてやれば、
ピン!と格好良い形になるんですよ」

なるほど・・・と、
トレーナーの方の判り易い説明に感心しながら肯く。

どんな相手にも『判り易く』伝えられる事はとても重要だと私は思っている。
カタカナ文字や難しい専門用語ばかりを
過剰に並べ立てて悦に入っている『頭の良い』人達は苦手だ。
(偉そうな書き方でスミマセン(涙)閑話休題)

トレーニング内容は『ムリ無く長く続けられる』を前提にプログラムされている所為か、
予想していた程八一ドでは無くてホッとする(^^)

一時間程のトレーニングの後、
「もし時間が有る時は、これをやると良いですよ」
トレーナーの方に薦められた『自転車漕ぎ』にチャレンジしてみた。

文字通り『電動自転車』を漕ぐだけ。

基礎体力を付ける為の『有酸素運動』なのだそうで、
ペダルは軽く設定して、無理せず、ひたすら長〜い時間漕ぎ続けるのが良いそうだ。

次の用事まで1時間程空き時間が有ったので、
とりあえず30分間漕いでみよう!とチャレンジしてみたが、
僅か10分で挫折してしまった(涙)


継続出来るかどうかは神のみぞ知る。

とりあえず頑張りマッスル!!



2004年04月17日(土) 塀の内の懲りない面々

イラクのテログループに誘拐されていた3人が無事に保護された。

良かった、良かった、めでたしめでたし・・・・・・・と思ったのだが、
世論は3人とそのご家族をかなり厳しく糾弾している。

「あんな危険な処に行った3人が悪いんだ」とか、
「殺されても文句は言えないですよね」等と、
会社の後輩の娘に言われた時は、ゾッと背筋が寒くなってしまった。

周囲の反対を振り切って戦争中の国に行った3人の行動は確かに無謀だが、
やっちゃったモンは仕方無いでは無いか?

自衛隊の(一時)撤退を要求したご家族の方々を
「身勝手な要求をしやがって!!」
「何て非常識でごうまんなの?!」等々
口汚く罵る人達が沢山いらしたが、
自分の大切な家族を”生きたまま焼き殺す“などと言われたら、
常識をわきまえている余裕が無くなってしまうのは、
むしろ人間として当然の反応では無いだろうか?と私は思う。

先日放映された『24』の中で、妻と娘を人質にされた主人公が、
「二人を助けてくれるなら、オレは人殺しでも何でもやる!」と
絶叫するシーンを想起してしまった。
(ドラマと現実を混同するな!と憤られた方、大変申し訳ございません)

今回はテロ・グループの要求に屈せず自衛隊を撤退させなかった
小泉総理の判断が正しかったと云う結果だったが、
もし、テロ・グループが3人を焼き殺していたら、
今3人とそのご家族を非難している『世論』は小泉総理を、
彼が『自衛隊』を派遣した事を激しく糾弾したのではないだろうか?

また開放された3人が、
「まだイラクで仕事を続けたい」と発言した事にも非難が集中しているが、
ボランティアをしていた女性に、
「この仕事(ボランティア)を続けて下さい」とイラクの偉い方がおっしゃったそうではないか。
そう言われて、
「いいえ、もうコリゴリです、二度とイラクには来ません」と発言出来るだろうか?

私個人としては3人に限らず、今後日本人が戦争中のイラクに行くのは反対だし、
『自衛隊』派遣にはそもそも反対だったので、3人が拘束されたと云うニュースを聞いた時、
「この際だから撤退しちゃえば良いじゃん」と思った。

だが、いつでも安全な『塀』の内に居る全く関係の無い人達は、
物事を一部の側面だけから見て、
当事者の痛みも知らない癖に声高く中傷ばかりする・・・・・・

そんな人々に、
私は心から憎悪と憤りを覚えずにいられない。


だから・・・・・・

2、3週間休んだ程度でガタガタ抜かしてんじゃねェ!
T先生も『もう一つの作品』の企画と並行していて大変なのかもしれないではないか!!
(↑・・・・って、何の話してんのさ(^^;))



2004年04月15日(木) あなたのエラサは何ポッチ?

我が家の愛犬リンが逝ってしまってから、2週間近くが過ぎた。

リンがいなくなった家の中は随分静かになり、とても寂しくなってしまった。
言葉を喋れなくても、リンは母と私の大切な話し相手だったのだ。

仕事からクタクタに疲れて帰って来て、
誰一人出迎えてくれない、シンと静まりかえった玄関を開けた時、
砂を噛む様な寂寥感がこみ上げて、堪らなくなる。

毎日、毎日、毎日、フリフリと尻尾を振って出迎えてくれたリンの存在が
どれ程大きかったかを改めて痛感させられた。

リンの遺骨は骨壷に入ったまま、まだ母の部屋に置かれている。

「本当は土に還してやるのが一番なんだけど・・・」

母は溜息混じりにポツリと呟く。

ウチはマンションなので埋めてやる為の庭や丁度良い場所が無いし、
『動物霊園』は、自宅からかなり遠い場所に有る。


「死んだら『魂』は、一体何処に行っちゃうのかしらね?」


『肉体』はここに有るのに、

『骨』はここに有るのに・・・・・・


死んだ後に体重を測ると生前より約21g減っている事から、
『魂』の重さは約21gだと云われている。

だが、リンの小さな身体から失われた『魂』がどんなに、どんなに重かったのかを、

私は知らなかった、
永遠に矢うまで・・・


『魂』の重さは失われた時に初めて、
その本当の重さが判るのかもしれない。



2004年04月13日(火) ガッツだぜ!

ようやく『イベント』が終了して身体も空いたので、
久し振りにバレエ教室へ行ったら、お休みだった(><)
何と、K先生が過労で緊急入院してしまったとの事。
突然の事でお知らせメールが間に合わなかったらしい。
いつも元気なK先生だが、先月末初の自主公演を終えられたばかりで、
心身共に疲れが溜まっていらっしゃったのだろう。
早く元気になって頂きたいと願いつつ、帰り道に立ち寄った『BOOK OFF』で
『ベルセルク』の1・2巻を衝動買いする(←関連性無いじゃねーか)

以前から興味は有ったのだけれど、
周囲に持っている人が皆無だったので読み損なっていたのだが、
一緒に『殺陣』を習っている『H×H』ファンのT島君が熱く、熱く、大プッシュしていたので、
思い切って購入してみた。

お金が無かったので1・2巻だけしか買えなかったが、やはり物凄く面白い!!

復讐に燃える主人公ガッツをクラピカと、ガッツを癒すエルフ(ケガを治す能力が有るのだ)をレオリオと重ねて色々『妄想』してしまうワタクシ(^^;)

勿論、お給料が入ったら、続きを買うつもりvvなのだが、
それにしても現在26巻まで刊行中で、しかもまだ終わっていないなんて・・・・・・

ただでさえ本が多い自宅の何処に置くスペースが有るのだろう(涙)
ちなみにT島君は『ベルセルク』と並べて『バガボンド』もお薦めしてくれたのだが、
これも相当長くなりそうだし・・・・・・

少年漫画は巻数がハンパじゃ無く多い作品ばかりなので、
新しい本を買って帰ると、
「また本を増やしたの?!」と母に怒られてしまう。

だが『コナン』と『犬夜叉』だけは黙認されている。

母も愛読しているからだ。



2004年04月03日(土) 『イベント』初日

悲しい出来事から一夜明けて・・・・・・

いよいよ今日は『イベント』初日である。

当初は危惧されていた天気は、何と快晴!!
「今日一日、雨の心配はいりません」と云う天気予報の強気の発言に勇気付けられながら、
家を出た。
出発前にリンの小さな身体を撫でてやる。
これが本当に最期のお別れなのだと想うと涙が溢れて止まらなかった。
可能ならば母と一緒にお焼場まで行きたいけれど、やはりそれは出来ない。
長い間、可愛がっては来たけれど、面倒を見ていたのは主に母だったし、
自分は結構冷たい飼い主だった筈なので、
まさか、リンとの別れがこんなにも辛くて哀しいなんて想ってもみなかった。

『イベント』会場に着くまでの間、ずっと、ずっと涙が溢れて止まらなかった。

『イベント』から帰っても、リンが冷たい飼主である私を玄関まで出迎えてくれる事は、もう永遠に無いのだ・・・・・・


さて、
今回の『イベント』会場は、
『調布』(或いは『三鷹』『吉祥寺』)からバスで約20分程の場所にある『深大寺』は
都下とは云え、東京都とは思えない程、美しい自然が残っていて、
まるで『プチ京都』と呼称したくなる程、とても風情の有る佇まい。

『深大寺』の周囲には名物の蕎麦屋さんがずら〜りと並んでいる。
手打ちを実演しているお店も有り、途端にお腹が空いてしまうワタクシ。
(昨夜はショックで何も食べられなかったのだ)

かの近藤勇も、この辺りで蕎麦を食べたのだろうか?
・・・・・・・などと、深い感慨に耽る間も無く、
午後3時開始の『イベント』準備に突入したのだった。

(続く?)



2004年04月02日(金) さよならは突然に

ウチの犬、リンが死んでしまった。

帰宅して自宅のドアを開けた途端、線香の匂いが鼻を着き、
「うわっ!どうしたの?」と声を上げると、

「・・・・・・リンちゃん、死んじゃった」

母の悲しそうな言葉がすぐには信じられない。

今朝はあんなに元気そうだったのに・・・・・・・


「今日は雨が降りそうだったから、布団を干さずに出掛けたんだよ、

そうしたら・・・・・・」

その布団に頭から潜り込もうとして、
首がつかえて抜けなくなったらしく、そのまま窒息死してしまったらしい。

母が仕事から帰った時は、まだ身体が温かかったので、
慌ててシャワーを浴びせたり、叩いたりしてみたのだが、
リンの身体はみるみる冷たくなっていったそうだ。

「病気や老衰だったら、まだ少しは諦めも付いたかもしれないけど、
まさかこんな死に方されるなんて」と、母は悔やんでいたが、
リンは小型犬の寿命はとっくに越えてしまっていた。

いつ死んでも不思議では無い年齢(16歳)ではあったから、
むしろこんなに長生き出来たのは、母が大事に面倒をみてくれたお陰なのだ。

また、リンは胸にガンが出来ていて、
もう年齢的に手術に耐えられないだろうとお医者様に言われてしまい、
痛くてキャンキャン鳴いていても、何もしてやれず、

(安楽死させるしか無いかも・・・・・・)と母と二人で悩んだ事も有った。

それでも、それでも、
人間の身勝手な我儘だろうけれど、
せめて、もう少しだけ生きていて欲しかった。

私はほとんど家にいないから面倒を見られないし、
母も体力的にキツイので、これから我家で犬を飼う事はもう無いだろう。
(犬に限らず、生物全般)

元気で傍に居てくれる内は良いが、
どうしても身体の小さい彼らの寿命の方が私達よりも先に尽きてしまう。

その哀しみを、母はもう二度と味わいたくないと言う。



「明日の午後、仕事が終わったらリンの身体を火葬しに行く」と泣きながら母は言う。

明日は『殺陣』の『イベント』が有るので、もちろん自分は立ち会えない。

哀しいけれど、辛いけれど、明日は笑って『イベント』の本番を努めなくてはならないのだ。


フワフワしたリンの毛皮に触れられるのは今夜で最後だ・・・・・・と、ずっと、ずっと撫でてやる。


リンの小さな身体は、
随分硬くなってしまっていたけれど、まだ少しだけ温かい様な気がした。


 < BACK  INDEX  NEXT>


ななか [HOMEPAGE]