蜜白玉のひとりごと
もくじかこみらい


2005年12月26日(月) 鳥たち

仕事場の裏手は少し前から山茶花(サザンカ)が満開で、濃い緑色の葉と濃いピンク色の花にうもれるようにときどきメジロを見かける。抹茶色のきゅっと締まった小さな体がもこもこと枝の間を動く。朝のうちの、まだ人があまり通らない静かな時間にしか見ない。

メジロはたぶんうちのまる(文鳥)より小さいはずだ。まるを飼いはじめてから鳥という生き物をまじまじと観察するようになり、なでたり突付いたりしかったり甘やかしたりするうちに、体つきの細部や表情がよく見えてきて、しまいにはまるが何を考えているのかがわかるようになった気さえする。そうするうちに、外にいる他の鳥たち、スズメやヒヨドリやメジロまでもが何やら親しいものに感じられはじめる(カラスとドバトは除く。彼らは1羽ならそれなりにかわいいけれど集まるとたちが悪い)。朝のメジロも、距離はそれほど近くないのに羽の質感や顔つきやがくっきりと見てとれる。立ち止まり息を殺して見つめる。不思議なものだ。

この頃のまるは背中を人差し指でそっとなでると、ふるふるふると尾羽を動かす。どうやらぞくぞくするらしい。気持ちいいのか悪いのか、少し身をかがめ恍惚とした表情をしている。なでるのをやめるとハッと我に返り、とたんに反撃に出て私の指を噛む。


2005年12月10日(土) 早めのクリスマスディナー

夜は近所のイタリアンレストランへ行く。前から気になっていたその店は隠れ家的というより、本当にオリーブの木々とカーテンに隠れていて中の様子があまりうかがえない。高そうな雰囲気も手伝ってなにやら入りにくい。最近になって友人から、あの店はちょっと高いけどおいしい、という評判を聞き、やっとのこと予約して乗り込む。

1階はカウンターと厨房と8人がけくらいの大きなテーブルがひとつ。地下へとつながる吹き抜けの階段を下りると、テーブルが4つ。奥にワインセラー。しんと横たわるワインがガラス越しに見える。それほど広くはないけれど、テーブルとテーブルの間にはちょうどいい空間があって、席に着くと周囲は思ったより気にならない。

明るく落ち着いた雰囲気、嫌味のない程度に親しみのこもった接客、いい素材を素直に調理した美しくおいしい料理、すべてが予想以上だ。この満足感を得られると思えば、お値段もむしろ良心的なくらい。近くにこんなにいいお店があったなんてね、たまには来ようね、記念日とかね。からだのすみずみまで料理とワインで満たされてぼーっとなったまま、夜道をゆっくり歩いて帰る。

2時間半かけた食事はすんなりと胃におさまり、苦しくも感じなければ食べたりないわけでもない。毎日こんな食事はできないけれど、本来、食事というのはこういうものなのかもしれない。何にも追われることなくのんびりと、心ゆくまで味わい余韻を楽しむ。この感じ、覚えておこう。


2005年12月08日(木) そんなときもあるさ

ちょっとくたびれたので一息入れようと思い、おともだちの文章を読んでまわる。みたらし団子の串にたれがつかないように機械を微調整しているであろうヤマザキの工場のおじさんの話(ⓒ深海魚宅配便)とか、かわいい人は人類の財産だから悲しませてはいけない話(ⓒジュジュ)とか、読んでほこほこと幸せな気分になる。やっぱり書き続けるのっていいなあ、とひとりで納得する。

調子の悪いときにはやること為すことのすべてが、そっけなく自分の外側を滑っていく。料理にしろ読書にしろ、ただうわっつらをなぞっているだけのようで、まるで手応えがない。今日のごはんあまりおいしくないでしょ、ごめんね、と言ったら相方はそう?そうでもないよ、とあまり気がつかない様子。

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これから読みたい本
『執筆前夜』
『ミドリノオバサン』
『黒雲の下で卵をあたためる』


2005年12月02日(金) 飲みっぷり◎

相方の上司さんによれば、私たち夫婦は結婚相手としては最高の相性だけれど、仕事のパートナーとしては最悪なのだそうだ。ただの誕生日占いだというわりには結構当たっている気がしてならない。思うに相方と私、お互いに良くも悪くもだらしなく、大雑把なように見えて細かいことにこだわる頑固者なので、仕事となればトラブル続出なことは想像に難くない。間違っても一緒にお店を開いたりなどしてはいけないのだろう。

今のところ結婚生活はいたって平和なのだけれど。

夜は職場の送別会。「社長」の奢りでしこたまワインを飲む。ワインを愛してやまない「社長」は、どんどんグラスをあける私の飲みっぷりに気を良くしたのか、終始にこにことワインの話をしていた。どこそこ産のワインがどうたらこうたら。ワインの歴史とか格付けとか。私は詳しいことはわからないけれど、お酒は好きだし、ボジョレ・ヌーボーも毎年楽しみにして11月の第3木曜日に買いに行くと話をしたら、まだ若いのによくわかっていらっしゃる、と何やら褒められ、どんな話の流れだったのか、今度、空気を圧縮して(?)コルクを飛ばすワインオープナーをプレゼントしてくれるという。かなり飲んでいた「社長」はそのことを覚えているだろうか。寝て起きたらきっと忘れているに違いない。

他の出席者たちは、お酒が苦手だったり、風邪気味であまり飲めなかったりして、後半はほとんど「社長」と私で飲んでいた。ワイン3本(白・赤・赤)みっちり堪能した夜だった。満足。


2005年12月01日(木) びゅんびゅん

師走。まだ年賀状を書いていない。買ってもいない。早く買わないと。

毎日がびゅんびゅんびゅんびゅんものすごいスピードで過ぎていく。寝たと思ったらすぐ朝で、出かけたと思ったらあっという間に日が落ちて、急いで家に帰って晩ごはんの支度をして片づけをしてお風呂に入って、気がつけばもう寝る時間。そしてまた朝。そんなふうにして今年もそろそろ終わろうとしている。

川上弘美『此処彼処』、角田光代『人生ベストテン』、グレイス・ペイリー『最後の瞬間のすごく大きな変化』を並行して読んでいる。エッセイ、短編集、短編集なので、これくらいなら混ぜてもOK。寒くなってからというもの、すっかり自転車もヨガも下火になってしまい、そのせいか読書の時間が少し増えた。寒いと体を動かすのが億劫で、そういうときこそ無理矢理にでも動かして、体の中から熱を作り出さないといけないのだろうけれど、根が怠け者なのでどうにもならない。

早めのクリスマスプレゼントにル・クルーゼの新しいお鍋が届く。今まで持っていたのはココット・ロンドの18センチで、もう少し大きいのが欲しかったので、25センチのココット・オーバルを買ってもらった。色は新色のディジョン・イエロー。これは絶対にかわいい。ますます料理が楽しくなるに違いない。

職場で席替え。窓の近くに移って明るくなり快適。食パンも席順も真ん中より端っこが好きだ。


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