蜜白玉のひとりごと
もくじかこみらい


2004年12月31日(金) ロマンスカーに乗って

相方とふたり、私の実家へ帰る日。

天気予報では雪が降ると言っていたが、朝起きてみるとうっすらと日が差している。朝ごはんを食べ、簡単に掃除をする。

10時に家を出るのに、パソコンの部屋で相方が何やらごそごそと作業をしている。留守宅が心配だから監視カメラをつけると言い出す。ウェブカメラとかいう目玉のおやじみたいなカメラをあっちへ置いたりこっちへ置いたり。その間にパソコンにソフトウェアをインストールする。とても出かける直前にやるようなことじゃない。

こっちは準備に忙しくカメラの前を行ったり来たり。そのたびに、あ、犯人が映った!と犯人呼ばわりされる。設置したはいいけれど、画像を撮っているだけでは意味がないので、何か映ったらその都度携帯にメールが来るように設定する。でも考えてみれば、仮に外出先でメールを受け取ったとしても、いきなり家に引き返すわけにもいかないし、メールはテキストだけで画像は送られてこないので、何が映ったのか知りたくても確かめるすべはなく、いたずらに不安になるだけなのだ。さんざん時間をかけたけれど、結局監視カメラはやめた。予定を30分オーバーして10時半に家を出る。ひと騒動だ。

少し焦ったが、予約していたロマンスカーには無事間に合う。帰省客・旅行客でロマンスカーは満席。うるさい。町田を過ぎたあたりから窓の外に小雪が舞う。箱根の手前で降り、JRに乗り換える。先日引っ越したばかりの実家へ着く頃には、みぞれまじりのどしゃぶり雨になる。

実家に到着後しばらくして、雪の影響でロマンスカーは全面運休、高速道路も一部通行止め、その他の電車も遅れたり止まったりした。危なかった。

お昼ごはんにおそば、晩ごはんはすき焼きをいただく。お酒もたくさん飲む。妹も帰ってきて、家族全員そろった。今年は相方もいる。父も母もうれしそうだ。


2004年12月29日(水) 初雪/『FUTON』

朝から雪が降る。わさわさと降り続けてあっという間に積もる。車や塀の上に5センチくらい。ひさしぶりに雪を見て、うきうきする。

ずっと気になっていた換気扇を掃除する。ねじをはずしてできるところまで分解する。洗剤を溶かしたお湯につけたりたわしでこすったり雑巾で拭いたりしていたら午前中いっぱいかかった。すっかりくたびれたけれど、ピカピカに光る換気扇を見ると、どうだまいったか、と思う。

とても寒くて外に出るのが億劫なので、お昼ごはんはパスタをゆでる。でも結局そのあと、晩ごはんのすき焼きのしらたきを買い忘れていることに気づいて、スーパーへ行く。水分の多い雪の上を長靴を履いてびちゃびちゃ歩く。こんな時期なのにスーパーはがらんとしていた。やっぱり雪だからだろうか。

午後は本を読んで過ごす。中島京子『FUTON』読了。田山花袋の『蒲団』をもとにしたお話。とてもおもしろかった。あげあし取りならいくらでもできるような内容だけれど、でもうまくまとめていて、最後まで読者を離さない。雪のおかげで読書に集中できたのもよかった。


2004年12月23日(木) ベンジャミン

実家の引越し1日目。今日は荷物の運び出しだけで、しかもおまかせパックにしたから手伝いはいらないということなので、今日は行かない。昼過ぎに母から電話で、作業は済んだこと、ベンジャミンが来て、引越しの間じゅう、ニャーニャー言って家の周りをぐるぐる回っていたことを聞く。

置いてけぼりにされたと思っているだろうか。母や私のお別れの挨拶はちゃんと通じているのだろうか。さっきからそれがとても気になって仕方がない。今からでも迎えに行きたいくらいだ。でも。

ベンジャミンは絶対触らせない。本当は人間のことがこわいのだと思う。今まで一度もベンジャミンをなでたことがない。手を伸ばすと引っ掻くか、怯えてさっと逃げてしまう。呼べばかわいい声で寄ってくるけれど、それも30センチくらいまでで、それ以上は絶対に近づかない。だからやっぱり連れて来られない。


2004年12月15日(水) 本を読みましょう

日曜日、ラジオをつけたら「今日を大切に」の歌が流れる。ふんふふん♪と鼻歌まじりに聴いていたら、なんだか歌詞が違う。聞き間違いか。気になって調べると、いつの間にか新しく3番から6番までできていた。


「今日を大切に」

3.
しっかりたべましょう
おいしくたべましょう
きょうをたいせつに
フィーノでかみをあいしましょう
しせいどう

4.
ほんをよみましょう
せかいをひろげましょう
きょうをたいせつに
フィーノでかみをあいしましょう
しせいどう

5.
ていねいにこいしましょう
ていねいにけんかしましょう
きょうをたいせつに
フィーノでかみをあいしましょう
しせいどう

6.
きゅうじつもはやくおきましょう
そのかわりひるねしましょう
きょうをたいせつに
フィーノでかみをあいしましょう
しせいどう

作:本間絹子


ますますいいなあ。本好きとしてはうれしい4番、忘れがちな5番、耳が痛い6番。大人になると、○○しましょう、なんて言われることもない。小学校のステンレスの手洗い場には、みかんの赤いネットに入れられた石鹸(蛇口からぶら下がっている)と、美化委員か誰かの作ったポスター。ポスターは水に濡れて、文字はにじみ、紙はよれよれになっていた。手をあらいましょう。うがいをしましょう。

このところよく本を読む。藤野千夜『彼女の部屋』読了。角田光代『あしたはドロミテを歩こう』、森絵都『カラフル』の2つは途中。他に人から借りている本もあるのでじゃんじゃん読まなければ。

頭が割れるように痛い。これはまずいと思って10時にふとんに入る。深夜1時過ぎ、体中が痛くて目が覚める。熱をはかると37度5分。また風邪だ。4時過ぎ、相方が冷蔵庫から熱さまシート取ってきて、おでこに貼ってくれる。寝ようとするが関節が痛くてなかなか眠れない。


--------------------キ---リ---ト---リ---セ---ン--------------------------

携帯電話に「今日を大切に」の歌をダウンロードできます。http://fino-ft.jp よりどうぞ。


2004年12月08日(水) 白いマンションのベランダ

視線の先に6階建てくらいの白いマンションが見える。子どもの頃によく見かけた、なつかしい庶民的な感じがする建物だ。ここは坂の上なので、マンションの最上階とその下2階分は遮るものがない。それより下は周りの建物に隠れてしまっている。

ベランダは全部こっちへ向いていて、さんさんと日に当たっている。今日みたいに天気のいい日にはどのベランダにも洗濯物やふとんがところせましと干してあって、その様子に生活のたくましさを感じる。特に上から2つ目の右側のベランダの干しっぷりはいつ見てもほれぼれする。昼間、外がどのくらい晴れていて暖かいのかもわからないまま、薄暗い部屋でもやしっこのようになりながらパソコンに向かっていると、だんだんに気がふさいでくる。外に出て、マンションのベランダを見ていると少し気が楽になるものだ。憧れにも似た気持ちで遠くのベランダを眺めながら、今すぐ帰ってうちもふとんを干したいなあ、と無理なことを考えてみたりもする。

家事というのは昼間に、それもできれば午前中にやってしまうものだ。ふだん夜に家事をしながらつくづくそう思う。昼と夜では仕上がりと、それに対する満足感がぜんぜん違う。だから週末に晴れるとうれしい。本当は朝寝をしている場合ではないのだ。それでもたいていは9時近くにごそごそと起き出して、過ぎてしまった7時代と8時代をもったいなく思い、追いつかんとばかりに最高水位で洗濯をはじめる。

あしたあさってはつめたい雨の予報。風邪をひかないように気をつけよう。周りにはゴホゴホ言っている人が多い。その中のひとりは一日中、私に向かって咳をする。横向くとか席を立つとか方法はあるだろうに。私のことが嫌いなのか、それとも単に何も考えていないのか。どちらにせよ迷惑なことこの上ない。あしたはこれみよがしにマスクをして行こうか。


2004年12月06日(月) ゆっくりお茶でも

とても気分がいい一日。いつもこうだといいのに。

朝は職場までひと駅分歩く。北風が強く吹く中を負けじと歩く。だんだん温まってくる。昨日の嵐で、葉っぱだけでなく枝までも落ちている。掃除がたいへんそうだ。

仕事は普段どおり何も考えないようにして一つ一つ片付ける。一難去ってまた一難。新しく来た上司に対して、どうして私がここまで面倒を見なければならないの、という言葉が何度出かかったことか。ここ数日のイライラの原因はまさにこれだ。とばっちりを受けている相方には本当に申し訳ない。早く今の立場に慣れて、別に何でもありませ〜ん、と平然な顔をして仕事をしたい。

帰ってきて、忘れないうちにあちこちへ電話し、こまかい用事をすませる。その合間に掃除。一段落してごはんの支度。ごまだれとゆずポン酢を用意して、豚しゃぶにする。丁寧に楽しく作れるかどうか。その日の気分は確実に料理に出てくる。だからせいぜい、家に帰ってきたらゆっくりお茶でも飲んで、自分を立て直すしかない。今日はそれがうまくできた。


2004年12月01日(水) 恋の後始末

裏口のあれは山茶花ではなくて椿だ。気づくと小ぶりのピンク色の花が2つ咲いていて、どう見てもそれは山茶花でない。どうりで隣の庭より開花が遅いわけだ。椿の花は半日陰の植え込みで上品にひっそり咲いている。それにしても山茶花と椿の葉っぱはよく似ている。花がなければ見分けるのは難しい。

いよいよ12月。激動の一年も残すところあとひと月になった。毎年この時期になると、月日が経つのは本当に早いなと思うのだけれど、今年は飛びぬけて早い。

昨晩のカップケーキはちょっと失敗。思ったより甘くなってしまった。疲れているときに作ると集中力が足りないからか、あまりうまくいかない。バナナとクリスマスプレザーブの甘味を計算に入れたつもりが、そうでもなかったようだ。今度はもっと砂糖を減らそう。

島本理生『生まれる森』は案外おもしろい。若くてもこういうふうに書けるのだなと感心しながら読む。ありがちな勢いやノリで読ませようとしていないところが気に入った。再読に耐えられそうな物語、たぶん信頼してもいいはずだ。

恋の後始末はとても難しい。ふる方もふられる方もたいへんなエネルギーが要る。ずっと忘れていたその感覚を『生まれる森』を読んでいて思い出した。野田ちゃんもサイトウさんも痛々しいことこの上ない。知ってて傷つけるのと、知らないで傷つくのと、どちらがつらいのだろう。私にわかるのはとにかくどちらもひどく消耗するということだけだ。視界がぼやけ、空気は薄くなり、耳鳴りがする。こんなところへ来るつもりじゃなかった。どこで道を間違えたのだろう。そう思いながらも、やり直しは不可能とどこか冷めた頭で知っていた。相手は頑なで、それと同じかそれ以上に私も頑なだった。ずいぶん痛いところをついてくる小説だ。

昨日借りた3冊のうちの残りの2冊は読んでみると数ページでうんざりしたので読むのをやめた。本は好きだしたくさん読みたいけれど、なんでもいいというわけではない。おぞましいのやら気持ち悪いのやら、他人を茶化してへらへら笑っているのはごめんだ。あちらこちらで、おもしろい、すばらしい、ぜひ読めと紹介されていても、付き合えないものもある。


蜜白玉 |MAILHomePage