蜜白玉のひとりごと
もくじかこみらい


2002年12月31日(火) ゆく年くる年

泣いても笑っても今日が今年さいごの日。昨日から風邪をひき、頭はぼうっとするし、鼻はつまるし、のどは痛いし、とんだ大晦日となる。それでも連休に体調を崩すのはいつものことで、たぶん「明日もあさっても仕事行かなくていいんだー」と気が抜けるから、そこをウィルスに狙われるのだろう。来年は「気を抜かない連休の過ごし方」でも考えなくてはならない。

今年はいつにも増して、笑いあり涙ありの一年だ。大変だった反面、退屈することはなかった。来年はどんな年になるのだろう。どんなことでも、前に進むエネルギーにできるように、したたかに明るく楽しく暮らしていきたい。


2002年12月28日(土) ブーゲンビリアのピンク

渋谷シネマライズで、映画『8人の女たち』を観る。2時20分からの回、それほど混んでもいない。雪に閉ざされたお屋敷で起こる殺人事件、犯人はその日お屋敷に集まった8人の女たちの誰かだ。殺された主人の奥さん、ふたりの娘、同居している義理の妹と母親、メイドがふたり、そして遅れて登場する主人の妹。ストーリー自体はそこそこ面白かったけれど、なにか物足りない感じ。それに、あんな終わり方ってないのに、とも思う。どんよりとした気分で映画館をあとにする。

週末でごったがえす渋谷を抜けて、山手線で新宿へ移動。こちらもすごいヒトヒトヒト。新宿南口ルミネ1*の5階、青山ブックセンターにてのんびり過ごす。ここのABCはスターバックス・コーヒーが併設されていて、好きな本を持ちこんでコーヒーを飲みながら読むことができる。ソファもあって、大きな画集をじっくり見たりするのにも都合がいい。

カプチーノを買って、ひとまず手近にあったごっつい本を手にとってみる。それは建築家ルイス・バラガン**についてのもので、彼が手掛けた建築の写真と解説が載っている。メキシコを活動の拠点とした建築家で、彼の建築はピンク色の壁と水が特徴的だ。以前からピンクの壁なんて奇抜だと思っていたけれど、その写真集を見ているうちに、ピンクの壁は彼にとってはごくごく自然なものなのだとわかった。というのも、バラガンのピンクはブーゲンビリアのピンクと同じで、まわりの緑とよく調和がとれているのだ。特に住居には心地よい静けさが感じられて、とても気に入った。建築に限らず、どういう意図でそれが作られたのかを知ることは、驚きと発見に満ちていてとても楽しい。

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*ルミネ…ルミネはJR東日本の駅ビル。新宿駅は大きいので、ルミネ1とルミネ2がある。他にも立川、横浜、大宮などJRの主要な駅にある。ここのキャラクター“ルミ姉”がとてもかわいい。顔もかわいいけれど、小憎らしいセリフがなんとも言えない。この前なんか、朝の開店と同時に配られる“ルミ姉カレンダー”(限定3000名様)をわざわざ並んでもらいに行ったくらいだ。ルミネのホームページはこちら

**ルイス・バラガン…夏にバラガンの展覧会があったのだけれど、なんとなく行かないままになってしまった。行っておけばよかったと今更ながら後悔している。ルイス・バラガンについてはこちら。私が読んだ本はこちら


2002年12月27日(金) 仕事納め

ずっと一緒に仕事をしてきた女性が退職した。彼女は私より4つ年上だけれど、今の仕事をほぼ同時にはじめたこともあって、お互いに仲間意識が強い。一緒に仕事をしていても変に気を遣うことなく、とても気持ちよく仕事ができた。仕事以外にもいろんな話をして、私にとっては頼りになるお姉さん的存在だ。私が信頼をよせる年上の女性は数少ない。彼女がいなくなるのは本当に寂しい。

別れ際、私は泣いてしまいそうで、たいした言葉が出てこなかった。仕事はこれで終わりだけれど、近いうちに会いましょう。ごはん食べたり、お茶したりね。そう約束すると「じゃあ、また」と言って、冬晴れの中、彼女は帰っていった。たくさんのお別れプレゼントと色鮮やかな花束を持って。

今年の仕事は今日で終わり。年が明けて、またいつもの生活に戻ったとき、彼女のいない職場はどんな感じなのだろう。


2002年12月24日(火) サンタクロース!サンタクロース!

クリスマス・イヴの夜、仕事の帰りに駅までの道を歩いていたら、なんと!目の前からサンタクロースが歩いてきた。ちゃんと大きな袋を肩にかついで、少し急ぎ足で。

正確に言うと、サンタクロースの格好をした日本人のおにいさんだったのだけれど、暗い道で遠くから見ると、おお!と驚いたのも確かだ。すれ違いざまメリークリスマス!と言ってプレゼントくれるといいのにな、なんて思いながらずんずん近づくも、結局何も起こらず(当たり前か)。

その人はアルバイトの途中という感じでもなかったから、きっと彼女の家にプレゼントを届けに行ったのでしょう。驚くだろうな、彼氏がサンタクロースの格好でピンポーンて来たら。


2002年12月18日(水) めざせかあちゃん

朝の9時半から仕事、夜の9時半から忘年会。午前1時帰宅。

仕事で、ひょんなことから、生後2ヶ月の赤ちゃんのお相手をすることになる。約2時間、赤ん坊と真摯に向き合ってみる。とにかく楽しい、そしてどういうわけだかこちらが自然と笑顔になる。顔をゆがめてぐずったり、ぱくぱくむにゃむにゃと言葉にならない声を出したり、つぶらな瞳で見つめたり、すやすや眠ったり・・・。ずっと抱っこしてあやしながら、母親の用事がすむのを赤ちゃんとふたりで待つ。はじめは軽いと思ったのに、だんだん重く感じられてきて、腕がプルプルしてくる。つくづく母親はたくましい。

そして、これは早いとこ「かあちゃん」になるべきだと強く思う。もともと私はどんな仕事もさしおいて、いちばんなりたい職業(?)が母親なのだ。それはここ数年ずっと心に強く思っていること。ただ、こればかりは私ひとりの努力でできることではないので、なんとなく先延ばしになっている。

最近では、40歳を過ぎて初産と言っても、それほどめずらしくなくなってきているけれど、それでもやっぱり母親が若くて元気なのは、子どもにとっても母親にとってもプラスになるものだと、親子の関わりを見ていてつくづく思う。

とにかく子どもというものはじっとしていない。いつもわくわくしていて、新しいものに貪欲に挑んでいく。そのひとつひとつにとことん付き合っていくには、体力が必要なのだ。そして何より笑顔と、余裕のあるおおらかな気持ちで子どもと向き合うこと。仕事上、たくさんの親子に会う機会を通じて、今はこれがとても大切なことだと私は思っている。

これからはおとうちゃん候補を探そう。


2002年12月17日(火) すき間をつくる

三好達治『詩を読む人のために』を読む。朝出かける前に、電車の中で読む本を選んでいて、気がつくとだいぶ詩から遠ざかってしまったのを思ってこれにする。途中まで読んでほったらかしだった本をもう一度はじめから読む。

三好達治がさまざまな詩を取り上げて、詩の世界を案内をしてくれる。新体詩、象徴詩、それに続く後期象徴詩。ここまでは文語調なので、中には何を言っているのかわからないものもある。味わうより前に、文語に対してちょっとした拒否反応が出る。それからがらりと変わって、口語自由詩。そこで、おおこれは!と思うような詩2編と出会う。


 雨の詩

  ひろい街なかをとつとつと
  なにものかに追ひかけられてでもゐるやうに駆けてゆくひとりの男
  それをみてひとぴとはみんなわらつた
  そんなことには目もくれないで
  その男はもう遠くの街角を曲つてみえなくなつた
  すると間もなく
  大粒の雨がぼつぼつ落ちてきた
  いましがたわらつてゐたひとびとは空をみあげて
  あわてふためき
  或るものは店をかたづけ
  或るものは馬を叱り
  或るものは尻をまくつて逃げだした
  みるみる雨は横ざまに
  煙筒も屋根も道路もびつしよりとぬれてしまつた
  そしてひとしきり
  街がひつそりしづかになると
  雨はからりとあがつて
  さつぱりした青空にはめづらしい燕が飛んでゐた
  
               山村暮鳥  詩集『風は草木にささやいた』より



 秘密

  子供は眠る時
  裸になつた嬉しさに
  籠を飛び出した小鳥か
  魔法の箱を飛び出した王子のやうに
  家の中を非常な勢でかけ廻る。
  襖でも壁でも何にでも頭でも手でも尻でもぶつけて
  冷たい空気にぢかに触れた嬉しさにかけ廻る。
  
  母が小さな寝巻をもつてうしろから追ひかける。
  裸になると子供は妖精のやうに痩せてゐる
  追ひつめられて壁の隅に息が絶えたやうにひつついてゐる
  まるで小さく、うしろ向きで。
  母は秘密を見せない様に
  子供をつかまへるとすばやく着物で包んでしまふ。

               千家元麿  詩集『自分は見た』より
  

どちらも情景がありありと目の前に見えるような、鮮やかな詩。難しい言葉などひとつもなく、むしろ単純に素直に書いている。

詩は楽しい。けれども、気持ちに余裕のないときにはたいした言葉は出てこない。心のなかに、言葉が遊ぶすき間をつくることがなにより必要なのだ。


2002年12月09日(月) 空から降る雪

朝5時55分起床。ガラガラと雨戸を開けると、一面真っ白になっている。夜半には雨から雪に変わると天気予報で言ってはいたけれど、まさかこんなに積もるとは。明るくなるのを待って、冬用のコートを着こんでマロの散歩に行く。

マロははじめこそおそるおそる歩いていたけれど、すぐに雪の上をぴょこぴょこ跳ねまわり、私にもいっしょに走ろうと催促する。マロは雪がとても気に入っているようだ。まさに「犬はよろこび庭かけまわり」な様子。積もった雪をパクパクと口に入れては、プシュンとくしゃみをしてブルブルっとふるえる。その動作を何度も繰り返す。ひとりで夢中になって雪と戯れている。最後にレモンシャーベットを作って(注:おしっこ)、意気揚々と家へ戻る。

散歩の帰り、歩きながら路上駐車の車に積もった雪をすくって、小さな雪だるまを作る。外の階段の端っこに飾る。

通勤電車の中は、雪が反射する光で驚くほど明るい。それに、しんと静かだ。電車のガタンゴトンの音も、人の話し声も、あらゆる音が小さく聞こえる。そうそう、雪は音を吸収するのだ。この感覚は、札幌にいた頃に似ている。何もかもが雪に覆われて、世界は少し落ち着きを取り戻す。

都心の雪は夕方4時頃にいったん上がって、また6時頃に降り出した。でもそれも、次第にみぞれまじりの雨に変わってしまい、もう朝のようなしんしんと降り積もる雪ではない。

仕事を終えて帰ってきたら、階段の端っこの小さな雪だるまは、溶けてくずれていた。


2002年12月07日(土) 気がつけば師走

師走も7日目。年末に向けて職場にいる時間が長くなり、家や街でゆっくりする時間が減る。本を読んだり、編み物をしたり、ホームページのコンテンツをちょこちょこ作ったり、友達とお茶したり、とめどなくおしゃべりをしたり、・・・。このところ、そういう時間が持てていない。このひとりごとだって北海道旅行以来だから、ものすごくひさしぶりだ。

本は最近、何冊かを並行して読んでいる。小樽の講演会の参考資料として『ふたりの山小屋だより』、それから佐藤さとるさんの『ファンタジーの世界』、あとはHTMLとスタイルシートを勉強するのに分厚い本を読んでいる(これは“読書”とは言わないか)。積ん読も数冊。

ホームページ作りは今までホームページビルダー任せにしてきたけれど、どうしても自分のイメージするようなページができずに、ついにHTMLタグを勉強しようと思い立つ。いろいろな場所(研修とか講習)で少しずつかじってきたのがよかったのか、だいたい話がわかるのでうれしい。ただ、「わかる」というのと「使える」というのとでは大きく違うのだろうから、へこたれずにがんばらなければならない。来年はビルダーに頼らず、自力でホームページが作れるといい。

編み物ブームは一時沈静化したものの、まだ細々と続いている。マロ(犬)のセーターがあと一息、次は自分のベストを作る。職場のこじんまり編み物サークルの一人が、模様編みの編み方が1000種類(!)も載っている本を貸してくれたので、どの編み方でいこうか思案中。あんまりのんびり構えていると冬が終わってしまいそうだ。

それにしても、12月はなぜだか予定がどんどん詰まってくる。来週は転職のためのこっそり面接(!)と、合コンという名の単なる食事会と、世田谷文学館での講演会聴講、再来週は忘年会が4つ、その間に年賀状を作って25日までに投函し、・・・あとはなんだっけ?

体重の変動と、お財布の中身が心配な、今日このごろ。


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