蜜白玉のひとりごと
もくじかこみらい


2002年10月27日(日) 秋の食卓

昨夜、マフラーが完成。作品No.1のこれはオフホワイトで、3辺にフリンジがついていて、首に巻くとショールみたいに見える優れもの(自画自賛)。友人Rとのデートにさっそく着用して出かける。評判は上々。ここだけの話、部分的に4目ほど減って、端がガタガタしているので、あまりじっくり見ることはお薦めしない。

デートに向かう電車の中で、昨日のひとりごとについて思いをめぐらせる。「クリスマス用カレシ」なんて作らない、だなんて、そう考えること自体がすでに消費文化に踊らされているんじゃないだろうか。ああ、いやだいやだ。どこまでも毒されている。

友人Rの知り合いのイタリアンレストランへ。手長えびのパスタなど、たっぷりのランチをいただく。食後のカプチーノは、ふわふわの泡の上にココアパウダーでおんなの子の絵を描いてもらう。あまりのかわいさに、しばらく見とれる。ランチの後はいくつか雑貨屋さんを見て周り、看板犬ビーグルのいるカフェへ。ここでは紅茶とケーキとスコーンをいただく。栗とクルミとレーズンのパウンドケーキがとてもおいしい。秋の食卓だ。

まだ10月なのに、私の手と足はもう冷たい。これから3月までこの末端冷え性に悩まされる。手袋をしても靴下をはいても、冷たさはあまり変わらない、強情な冷え性なのだ。冬の私の手は冷蔵庫とほぼ同じ温度。そんなわけで、風邪をひいて熱が出たとき、おでこを冷やすのにちょうどいい。熱いおでこにくっつけても、手はなかなか温まらない。さすがに「熱さまシート」には負けるけど。

どこかに、手がぽかぽかとあたたかくて、深町直人(江國香織著『流しのしたの骨』)みたいにやさしい人、いないかなあ。


2002年10月26日(土) クリスマスソング解禁

クリスマスソング解禁。本当はせめて11月に入ってからにしようと思ったけれど、我慢できず。記念すべき1枚目のアルバムは小野リサ“Boas Festas”で、今まさに聴きながらこれを書いている。近くの東急ハンズは今週からHAPPY CHRISTMASなんて飾っていて、HALLOWEENもまだなのに、もうクリスマス商戦をはじめたようだ。こんなに早くはじめたら、クリスマスの頃には、クリスマスソングにもイルミネーションにも食傷気味になっているだろう。

これからの2ヶ月は用心して過ごさなければいけない。街中にあふれる幸せそうなカップルを見て、うっかり足元をすくわれないように。じっと身をひそめて、嵐が過ぎ去るのを待つしかない。くれぐれも「クリスマス用カレシ」なんて作らないように。消費文化に踊らされるのだけはゴメンだ。私の小さなクリスマスを大切にしよう。家族と友人の幸せを祈る、静かなクリスマス。

今日は遠出の予定があいにくの天気で中止になる。温かい紅茶を入れて、昼は借りてきたビデオ『小説家を見つけたら』と『ノッティングヒルの恋人』を見る。ジュリア・ロバーツは文句なしにかわいい。たれ目のヒュー・グラントもかわいい。夜はクレヨンしんちゃんの特別番組を見る。しんちゃんの口ぐせである「そうとも言う」は、ときどき使わせてもらっている。とても便利な一言だ。あまり夢中になって、ぽかんと口を開けて見ていたようで、母に笑われる。父はクレヨンしんちゃんを「生意気だ」と言って嫌うけれど、私は素直で憎めなくてとてもかわいいと思う。結局、今日は一日中テレビの番をしていた。テレビっ子、満足。


2002年10月21日(月) 毛糸だま

昨日から編物をはじめる。編物はおろか、手芸なんてめったにしない。あまりの唐突さに、父も母も妹も単なる驚きを通り越して、心配そうな表情を向ける。「何かあったか?」「どうして編物なの?」「なんでそんなことしてんの?」私が編物をしちゃ悪いか。別にたいした理由はない。いつもと違うことがしてみたくなって、手っ取り早くはじめられるものとして思いついたのが、編物なのだ。

まずは、ウォーミングアップがてら、マフラーを編む。細かい作業は好きなので、一度編み始めると、楽しくてなかなか止まらない。どんどこ編む。ついつい夜更かしになる。マフラーが3分の2くらいできあがったところで、飽きてきたので、次にルームシューズを編む。だんだん形になっていく過程がおもしろい。

編物をしようと思い立ったのはいいけれど、どれくらい続くか怪しいものだったので、マフラーもルームシューズも家にあった毛糸で作った試作品。でも、編みはじめるとこれがなかなか楽しくて、しばらくは続きそうな気配だ。明日は新しい毛糸を買いに行こう。自分用の赤いルームシューズを作って、そのあとは三角ショールの予定だ。この前、雑貨屋さんで見たのがとてもかわいくて、それと同じようなのを作るつもり。はてさて、イメージだけで、ちゃんとできあがるのだろうか。


2002年10月14日(月) プールで泳ぐ

いつもより早く起きて、朝9時過ぎに市立室内プールへ行く。泳ぐのはとてもひさしぶりだ。ここは50Mプールで、広々していて気持ちがいい。朝いちばんなので人も少なく、自分のペースで好きなように泳げる。競争を仕かけてくる物好きなおばさんもいないし、泳ぎながらだんだん近寄ってくる迷惑なおじさんもいない。プールの底には、太陽の光がゆらゆら揺れている。水をかいて進む音しか聞こえない。

小さい頃は心臓が弱くて、4歳で死にかけて(これはつい最近になって両親から聞いたはなし。自分ではその時は単に入院しただけで、そんなに大変だったとは知らなかった)、そんなわけで小学校6年生までは、毎年大きな病院へ行っては1日かけてあれこれ検査をしなくてはならなかった。プールは健康のために、小学校2年生から通っていた。小学校6年生のとき、医者に「もうだいじょうぶでしょう。スポーツ選手になってもいいくらいです」と太鼓判を押され、そこそこ頑丈な心臓になったようだ。

その後、中学の3年間は、スイミングスクールの選手コースにいたこともあって、毎日ひたすら泳いでいた。平日は学校が終わってから3時間、日曜日には朝練と夕練があって、朝夕3時間ずつ、1日で1万5千メートルくらい泳いでいた。今の怠惰な私からはとても考えられないような、マッチョな生活をしていたのだ。過酷なのは夏休みで、夏休みは学校がないから毎日のように朝練と夕練があり、さらに朝練と夕練の間にときどき昼練なんていうのがあって、山登りやら市内ジョギングやら、コーチの勝手な思いつきで体力作りをさせられた。いつも筋肉痛と疲労でとにかくへとへとだったし、途方もなくお腹が空いていた。そんなときは1日5食だった。…やっぱり今の私からは想像つかないし、自分でもちょっと信じられない。でもまあ、おかげで体力は相当ついたし、泳ぐことには困らない。心臓も全く問題なし。

おもしろいのは、プールの中でも汗をかくということだ。泳ぎこむと、屋外のスポーツと同じように汗がだらだら流れてくる。心拍数が上がって、心臓が焼けるように熱い。限界まで自分を追いこむ。ある時点まではものすごく苦しい。それでもしばらく続けると、ふっと軽くなって苦しさが感じられなくなる。泳いでいるのが自分なのかどうなのかさえわからなくなる。そしてそんなとき、いいタイムが出る。体力的にはきつかったけれど、とことん真剣にやっていたし、泳ぐのは楽しかった。

今でも泳ぐのは楽しい。だけど、もうそんなにたくさん、そんなに速く泳がなくてもいい。それにたぶん、たのまれてもそんな風には泳げない。筋肉はだいぶ落ちたし(その頃より体重7キロ減!?)、持久力も落ちた。今は好きなように、のらりくらり泳ぐ。そのことがとても心地いい。また、コンスタントに泳ぎ続ける生活をしてみようと思う。


2002年10月10日(木) なわばり争い

うぃーんうぃーんと草刈り機のうなる音が聞こえる。斜め向かいの公園だろうか。耳障りだと思いながら、急いで出かける支度をする。バスの時間まであと10分だ。公園にしては音がずいぶん近くから聞こえるような感じがする。隣の家だろうか。気になって窓から顔を出してみると、うちの庭に2匹の猫の姿。ベンジャミンと見たこともない白黒猫が向かい合い、体中の毛を逆立てて、今にも飛びかからんばかりになっている。草刈り機と思ったのは、猫が威嚇している声だったらしい。猫の鳴き声と、子どもが駄々をこねて泣く声が似ていると思ったことはあるけれど、まさか草刈り機のうぃーんにも似ているとは。これは新しい発見だ。

見ている端から取っ組み合いの大喧嘩になる。でんぐり返るは引っ掻くは、2匹の暴れ方はすさまじい。ベンジャミンよりも、若くてたくましい白黒猫の方が少し優勢か。がんばれベンジャミン!

うちの庭は3年前から一貫してベンジャミンのなわばりだ。実の子どものルルとチチでさえ、そこそこ成長した時点で、母猫ベンジャミンに平手打ちを食らい、庭から追い出された。自分で新しい居場所を見つけなさい、というのだ。ベンジャミン母さんは厳しい。

ベンジャミンが怪我をしないかハラハラしながら見ていると、いきなり隣の家の網戸が開いて、おばさんが2匹めがけて水をぶっかけた!これには私も驚いた。2匹は慌てて逃げていく。ハッと我に返ると、もうバスが来るまでに時間がない。家を飛び出し、私も慌ててバス停まで走った。


(注)ベンジャミンとは、うちの庭にやって来る三毛猫のこと。彼女との付き合いは、1999年11月2日からずっと続いている。彼女との出会いを詩にしたものが、ことばあそび>あいうえおあお〜50のカタチ〜>ち>チキンスープ である。おひまでしたら、そちらもどうぞ。


2002年10月08日(火) 考えない練習

毎晩なかなか眠れない。部屋の電気を消して真っ暗闇になると、いつもなんとなく心にひっかかっている諸々のことが次から次へと湧いてきて、変に頭が冴えてしまう。寝つくのに1時間くらいかかる。以前はせいぜい10分もあればよかった。寝よう寝ようと思うと余計に眠れない。眠れない間は不安でたまらない。だから今日もこうして日記を書いたりしながら、本気で眠くなるまで起きている。眠れないのなら、起きているまでだ。

考えることをやめるというのはかなり難しい。もともとよく考える方なので、考えずにいる、というのがどういう状態なのか、いまいち感覚がつかめない。さすがに仕事中はあまり他のことを考えている余裕はない。けれども、考える時間もないほどに忙しい生活をしているわけではないので、考える時間などいくらでもある。

暗闇は心細い。その心細さのままでいろいろ考えるから、考えたことがそのまま夢に出てきて、たいていうなされる。泣いていたり、走って逃げていたり、誤解をとこうと一生懸命説明していたり、夢の中の私は忙しい。朝起きると体がガチガチにこわばっていて、ぐったり疲れている。こうなったら、小さい頃みたいに電気をつけて眠ろうか。


2002年10月07日(月) きょうはなんのひ?

バス停までの道は、つい2、3日前までキンモクセイの香りでいっぱいだったのに、今日は銀杏(ぎんなん)の香り。何の前触れもなく、頭上からぽとぽと銀杏が落ちてくる。毎日この道を通るから、そのうちいつか銀杏が私の頭にあたるはすだ。そんなことを考えながら、あまり息をしないように歩いていると、横を通り過ぎる車が銀杏を踏みつけた。あたりはさらに銀杏臭くなる。

銀杏を本当においしいと思ったのは、数年前のことだ(それまでは、茶碗蒸しの銀杏なんて、噛まずに飲みこんでいた)。フライパンでからからと音をたてながら銀杏を炒る。ちょっと焦げた殻を割り、薄皮をむくと、つやつやとした黄緑色の実があわられる。炒った香ばしさと、実のほろ苦さが、とてつもなくおいしい。今年も銀杏をもらいに、知人の農園へ行こう。本来は蜜柑農園なのだけれど、他にも色んな実がなっている。そこでは銀杏の果肉を取り除くのに、使わなくなった古い洗濯機を使っている。もちろん、銀杏専用。土に埋める方法もあるけれど、こっちの方が効率がいいのかもしれない。

さて、2年前の今日、とてもいいことがあった。その日はとにかく“絵本気分”で、そんな“絵本気分”にクレヨンハウスははずせないから、数字の2とふたりで、夕方、青山のクレヨンハウスへ行った。1階であれこれ絵本を見ていると、上から人がいっぱい降りてきた。講演会が終わって、なにやらサイン会が始まる様子。誰かなあと思っていたら、やって来たのは、江國さん!

すごく驚いたのとうれしいのとで、私はすっかり気が動転してしまった。いったん外に出て、夕暮れの表参道をあてもなくうろうろ歩き、少し落ち着いてきたところでお店に戻り、その場で『絵本を抱えて部屋のすみへ』を買い、何気なくサイン待ちの列に潜り込んだ。私は偶然そこにいただけで、講演会には出席していなかったけれど、ちゃっかりサインをいただいてしまった。あの日、私たちは昼間からなんとなく浮かれていて、クレヨンハウスもその場の思いつきで行った。もしも絵本の神様がいるとすれば、私たちは絵本の神様に導かれてクレヨンハウスへ向かったのかもしれない。そんな不思議な感じのする日だった。

だから私たちにとって2000年10月7日は特別な日で、以来10月7日はふたりの間では“絵本記念日”となっている(数字の2が忘れていなければ)。絵本記念日には必ず絵本を1冊買う。今年は、佐藤さとる作・村上勉絵『おおきなきがほしい』を選んだ。これは、この夏の講習で仲良くなった3人の間で、いちばん話題になった絵本だ。


2002年10月05日(土) 夜型生活

10日ぶりのひとりごと。講習が終わって生活時間帯が変わり、なかなかリズムがつかめないでいる。朝型から夜型へ、全てが3〜5時間ぐらい遅くなった。起きる時間も寝る時間も、ごはんの時間も日中の活動時間も。その上、気温も暑くなったり寒くなったりで、いまいち調子が出ない。

先週の金曜日、仕事に復帰した。会う人会う人に、講習どうだった?と聞かれ、返事に困った。いろいろあったけど一体何から話そう、でも立ち話してる時間もないし、などどあれこれ考えながらも結局にっこり笑って、楽しかったです、と一言だけ答えた。時間がたつと、大変だったことは忘れてしまって、楽しかったことだけ覚えている。とことん充実した2ヶ月だったと思う。今後に活かせるかどうかは自分次第だ。

講習の成果の発表を!という、うれしいリクエストをいただいたので、「成果」というのとは少し違うけれど、新しいコンテンツとして「アンテナ」をはじめた。「アンテナ」では、子どもの本や子どもの発達に関わるイベント情報をお伝えするつもりだ。私の興味のあるもの、私のアンテナにひっかかったもの、というわけで「アンテナ」。そのまんま、である。

「アンテナ」の他にもいくつか計画・作成中。講習でやったことの中で、みなさんのお役に立ちそうなもの、おもしろいものを、と考えている。どうぞお楽しみに・・・!


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